258『突撃、ストーカー女』
「変なのに好かれたわね。
一体何があったの?」
ジェラルディンとラドヤードは今、2人が宿泊している高級宿のレストランでディナーを摂っていた。
そして今夜の話題は例のストーカー女の事だ。
「何もありませんよ。
ただ単に同じ護衛依頼を請け負っただけです。
任務中も特別頻繁に接触したわけでもないのに、突然鬱陶しいくらいまとわりついてきて。
なので俺は奴隷で主人がいると言ったんです。
そうしたら……何をどう脳内で変換したのか、あの通りです」
「まったく鬱陶しい事ね」
掌で口を隠してコロコロと笑った。
その手首のレースが揺れている。
「ところでこのドレス、如何かしら」
ジェラルディンのワードローブはタリアによって一新された。
王都での流行を取り入れたドレスの数々はジェラルディンの目も楽しませている。
「とてもお似合いです。
……以前より大人っぽいドレスをよく着こなしてらっしゃいます」
「ありがとう。
ラドもよく似合っていてよ」
この、富裕層の社交場と言えるレストランで食事するため、ラドヤードもそれに準ずる装いをしている。
「そのアストマス織のサーコートも素敵よ。
タリアのセンスは秀逸ね」
濃い目のクリーム色のサーコートに首筋にはたっぷりとひだをとったリボンタイ。
誰が見ても奴隷には見えない。
「ところで、ラドは本当に私の側にいることに不満はないのかしら」
「もちろんです、主人様。
……俺ももう全盛期のようには動けませんし、何よりも主人様と一緒にいると楽しいのです。
主人様にもう要らぬと言われるまでお側に置いていただきたいです」
「もちろん私は大歓迎よ。
でもね、正直ラドがどう思っているか不安だったの」
うふふ、と笑ったジェラルディンがワイングラスを取り上げた。
そして2人は乾杯する。
「あら?」
視線を感じたジェラルディンがそちらに顔を向けると、そこには昼間ギルドで遭遇したストーカー女がいた。
こちらに凄い勢いで向かってくる。
「そちらはお客様方の社交場です。
勝手に立ち入らないように」
そう受付にいた男性に戒められても構わず突進していくストーカー女を、パーティーのリーダーと案内係が慌てて追っていく。
普通、高級宿のホールまでは一般人も入ることが許されているのだ。
ストーカー女たちは依頼主を訪ねて、この宿にやってきたのだが、偶然ジェラルディンたちを見つけてしまった。




