253『訪問』
「それは……」
使者である副ギルド長は口ごもった。
この件に関しては独断で返事を返す事はできない。
「拒否される事はないと思いますが、一応確認してきます。
それよりもそちらの方はよろしいのですか?」
「主人様がそう仰っておられますので、問題ありません」
ジェラルディンとカイユレ氏側の第一回の話し合いは順調に終わった。
それから数度の遣り取りの後、ジェラルディンは王都の郊外にあるカイユレ氏の別荘に招かれていた。
「本日はこのようなところにお越しいただき、誠にありがとうございます」
玄関ポーチで出迎えたカイユレ氏が深く深く頭を下げた。
その横で同じように頭を下げている若い女性は、おそらく彼の妻で患者の母なのだろう。
頭を上げた彼女の顔色は蝋のように白い。
「こちらこそお邪魔します。
今回はどうしても患者の様子を見ながらポーションを使いたかったのです」
そう言ったジェラルディンは、今日は一切の偽装を解き、黒髪、黒瞳の本来の姿を見せている。
そのことに、余計にカイユレ氏は恐れ慄いているのだ。
「さて、早速診察しましょう。
坊やはいくつですの?」
「はい、先月6才になりました」
「……怪我を負ったのはいつ?」
「もうふた月になります」
早足で向かった部屋は清潔で、窓からは陽の光が燦々と差し込んでいる。
ただ直射日光で眩しくないようにベッドの頭の方だけ天蓋から垂れ布が下がっていた。
「だれ?母様?」
小さくて少し甲高い子供の声がした。
「ええ、それとお客様をお連れしたの」
「お客様?」
垂れ布の向こうで身動ぐ気配がする。
素早くベッドに駆け寄った夫人が少年の額にキスをした。
「そう、キミルの怪我を治しに来て下さったのよ」
「ぼく、治るの?」
それは少年の、心からの叫び、悲痛な声だった。
「そのために患部を診せてもらうわね。
悪いけど寝巻きを脱がせてもらえるかしら」
夫人が手早く寝巻きを脱がせて少年……キミルは下着ひとつになった。
そしてその身体に刻まれた傷痕と欠損部位が露わになる。
右腕は肘から下がない。
左腕は欠損こそないが腱が切断されているのだろう、肩からダラリと垂れ下がっている。
足はもっと酷かった。
右脚は太腿の半ばあたりから先がない。こちらの患部はきれいなので、挫滅した部分を切断したのかもしれない。
左脚は食いちぎられただろう膝下の切断面が痛々しい。
そしてなによりも塞がり切っていない切断面の傷が化膿し始めているのだ。
ジェラルディンはそのあと他の部位にも異常がないか確かめると両親に向かって振り返った。
「はい、わかりました。
この後の治療ではポーションを直接患部にかけますから周りが濡れてしまうのですがよろしいですか?」
両親は揃って頷いた。
「では、はじめます」




