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236『大風のあと』

 馬車がガタガタと飛ばされそうに揺れる。

 そんななかジェラルディンは狭い馬車の中でサンドリアンとその従者とともに身を硬くしていた。


「主人様、このくらいなら大丈夫ですよ。

 できれば今のうちに眠っておいて下さい」


 商人たち並みに経験豊富なラドヤードは大風(台風)くらいでは動じない。

 彼のその落ち着きように心強かったジェラルディンだったが、さすがにこの状況で眠れるほど図太くなかったようだ。

 そのまま大風が通り過ぎる朝方まで、まんじりともせずに過ごした。



「外にゲルを出さなくて良かったかもしれないわね」


 あの状況でゲルを出すには結界石は欠かせない。

 そうすると隊商全体を囲む必要に迫られたろうと想像できる。

 なるべく自身の能力を明らかにしたくないジェラルディンだが、この魔導具である結界石もあまり広げたくないもののひとつだった。


「そうですね。

 ゲルだけ無事だと目立ちますし、かといって結界石なしでは風に飛ばされてしまったでしょうし」


 地面は降り注いだ雨によりドロドロになっていて、ジェラルディンが馬車から降りるのを躊躇わせてしまう。


「今、冒険者たちが先見に出て、この先倒木などないか確かめています。

 ルディン嬢にはもう少しお待ちいただきたい」


 他の商人たちと話し合っていたサンドリアンが戻ってきて、そう言ってきた。

 隊商の馬車の中には泥の中に車輪が沈んで、動かないものもあるようだ。


「このまま乾いてしまったら本当に動けなくなるので、今皆で押して動かしています。

 幸い、大した数ではないので、すぐに出発することになるでしょう。

 もしこの先の街道が被害を受けていても、もっと地面の状態が良いところまで移動します」


 ジェラルディンはただ頷くしかなかった。



 所々の倒木は冒険者たちがその膂力にものを言わせて何とか馬車が通れるようにした。

 崖崩れなどはなかったが、地盤が緩んでいる場所からなるべく早く移動したい為、動ける馬車からどんどんと出発していく。

 ジェラルディンたちの馬車は中心にいたので出発が最終に近くなった。

 明るいうちに行けるところまで行って、今夜は街道で野営となりそうだ。



「夕食は手軽に食べられて腹持ちの良いもの。

 十分に栄養が得られて、身体が温まるものといえば……アレが良さそうね」


 根菜や豆、肉団子にショートパスタがたっぷりと入ったスープはシンプルな塩胡椒味で、ジェラルディンのアイテムバッグから大鍋5個が取り出された。

 他に大量のホロホロ鳥のから揚げとバターの包み込まれたロールパン。

 いずれも量だけはたっぷりあるので、疲労困憊の冒険者たちにもウケが良かった。

 そして自らスープを配る姿は、とても貴族とは思えない姿だった。


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