234『隊商再開』
騎士とともに代官屋敷にやってきた2人組……そのうちのひとりは疑いなく貴族で、今しがたスラムのゴロツキに襲われて返り討ちにした存在だ。
代官は冷や汗が止まらない。
貴族は体面を重んじる。
なのでこの度の件は絶対に看過できない事象なのだ。
そういう訳でジェラルディンたちにお礼参り?の許可を出した代官は、火事が起きている報告は受けていたが、まさかそれ以外のスラムのほとんどが更地になってしまっていると聞いて吃驚仰天してしまう。
騎士に急かされてやってきた代官は目の前に広がる状況があまりにも非現実じみていて言葉もなかった。
そして改めて貴族の恐ろしさに怖気を震う。
偶々スラム街にいなかった住人がちらほらと見える。
皆、呆然と自分の生活拠点があったはずの場所を見つめていた。
「な、何があったと言うんだ」
まさか貴族に逆らった連中のとばっちりでスラム街もろとも消されたとは思わず、両親や妻子を探しているものもいる。
事情を知る騎士たちもオロオロするばかりで、くってかかられてもどうしたらいいかわからない。
その頃、渦中のジェラルディンたちはサンドリアンとともに、もうすでに馬車に乗って集合場所に向かっていた。
「ルディン嬢、トラブルに巻き込まれたと聞きましたが、大丈夫でしたか?」
「ええ、ご心配ありがとう。
幸いにも理解のある代官殿で助かりました」
彼もまさかスラムを殲滅しているとは思っておらず、それは良かったと頷いている。
隊商はつつがなく門を通り列をなして街道を進んでいく。
これでジェラルディンの “ スラム殲滅事件 ”は一件落着をみた。
ジェラルディンたちと旅をともにして、その常識はずれの行動にもすっかり慣れたサンドリアンは今宵も彼女に今まで旅してきた地域の話を披露していた。
「昔はもっと大変でした。
何より森はさらに深くて暗い。
街道も今ほど整備されていなくて、魔獣が出没することも多かったのです。
そういうことで冒険者の数も、今よりもっと多くて、それでも足りなくて……」
旅の商人の悲哀、悲喜こもごも。
目前で儚くなった馴染みの冒険者たちを思い出し、しばし感傷に浸っていた。
「俺の師匠だった人が現役のころは、そういう状況だったと聞いています。
ただ、最近はまた魔獣の数が増えています。
新しいダンジョンもあちこちで出来ていますよね?
これからは警戒した方が良いと思います」
ラドヤード、ポテトサラダをかき込みながら言っても説得力がないですよ。
野営の大敵は何と言っても雨である。
それも雨足が強く気温が低くなる長雨は、この季節にはまま、あることで足止めされることも珍しくない。
ちょうど山間部を走っていた隊商はなるべく馬車を密集させて、冒険者たちもひとかたまりになっていた。
「はーい!
熱々のスープができましたよー!
タープの下で召し上がって下さいね」
とうとうジェラルディンの “ ふるまい ”が始まった。




