223『隊商の状況』
日暮れ前に突然戻ってきたジェラルディンは、思ったよりも長引いたことを詫びた。
その上で留守中の隊商についてラドヤードに尋ねた。
まずはドゥワームの容態だ。
「昨夜は熱が出て、今も薬湯を与えてゲルで休ませています」
本来なら死亡していただろう頭の怪我だ。いくらポーションで治療したといえ、身体自体が悲鳴をあげているのだろう。
「そう、隊商全体としてはどう?」
「昨日の襲撃で何名か死者が出ています。
主に護衛の冒険者ですが、商人も2名ほど殺されました。
それとかねてから疑っていた内通者ですが、確認できましたので処分しておきました」
「どうもありがとう。
……留守中、心配かけたわね」
「ご無事だとは思っていました。
ところで首尾は?」
「目にもの見せてやったわ。
それと、アジトのすべてを持って帰ってきたの」
それは文字通り “ すべて ”だった。
盗賊たちの骸はもちろん、洞窟も岩盤ごと抉って持ってきたのだ。
異空間収納のインデックスには数えようもないほどの物品が追加されていた。
「この盗賊団はかなりの規模だったらしくて、蓄財していた金子もかなりのものだったわ。
やはり盗賊の上前をはねるのは実入りがいいわね」
金銀宝石装飾品に希少品。
金子だけでも金貨が70万枚超あり、普段はあまり金子に執着しないジェラルディンでも笑みが浮かぶ。
「ところで、私がいなかった間はどうごまかしていたの?」
「お身体を強かに打って、ご気分がすぐれずにおられるという事にしておりました」
「ああ、それでゲルが二つ出ているのね。
気分がすぐれず動けない女人の寝所に立ち入ってくるものはいないわよね」
ジェラルディンは衣服を整え、ドゥワームを診察してからボドリヤールの元に向かう事にする。
「おお、ルディン様。
もうお身体のかげんはよろしいのですか?
この度は倅の治療をお願いすることにもなり、そちらもご負担をおかけしたよう。真に申し訳ない」
頭を下げたボドリヤールだが、彼も負傷していたようで、頭に包帯を巻き左腕も三角巾で吊っている。
「そちらこそ、ちゃんと治療は受けられましたか?」
今回の隊商に医師は帯同していなかったはずだ。
ジェラルディンは【鑑定】してボドリヤールの怪我を診察し、頭はかすり傷、腕に関しても骨折は見られなかった。
「このくらいなら初級ポーションで治るでしょう?」
「いや、今回は負傷者がそれなりの数になり、ポーションの在庫が枯渇気味でして。
軽傷には使わなかったのです」
「それなら私が融通して差し上げられますわ」
無駄に痛い目に遭わなくて良いのだ。
初級ポーション一本で腕の傷は治り、頭の傷も塞がった。
今回の襲撃は斥候として派遣された5名と内通者として入り込んでいた3名による奇襲であったが、思わぬ被害を生んだ。
積荷を奪われることはなかったが、被害を受けた馬車も少なくない。
「現在積荷を載せ替えているところです。
破損した馬車などは次の町から運搬のための馬車が着きしだい搬送します」
商人というものはほんの僅かでも価値のあるものを棄てることができない。
ジェラルディンは内心でやれやれと思った。




