222『盗賊団、殲滅』
ジェラルディンが思った通り、奇襲してきた盗賊は3名が監視に残り、2名が馬で駆け戻っている。
その馬の影にジェラルディンは潜み、彼らが向かっているだろうアジトに向かっていた。
馬で駆ける事、約1日。
方向的にはスペランサに戻る、そして街道から外れ山岳地帯に向かっているようだ。
その、巧妙に隠された道の途中には馬を替えるための厩もあり、そこでの仲間との話から、あと半日ほどでアジトに着くようだ。
そこは砦だった。
岩壁を後ろにいくつかの木造の建物が並び、その奥にはどうやら洞窟があるようだ。
「これはかなり大規模な盗賊団ね。
うふふ……やり甲斐がありそうだわ」
ジェラルディンの、側からは幼く見える顔に邪悪な笑みが浮かぶ。
そう、彼女は怒っていた。
せっかく形になりつつあったレース編みがおじゃんになってしまったのだ。
「さてと、ここまで来るのにすれ違わなかったから、殆どの盗賊がここにいるのかしらね。
……まずは邪魔な建物を退けないと」
おそらく、ジェラルディンたちのいる隊商を襲う本隊なのだろう。
数十頭の馬が引き出されてきて荷物が括り付けられている。
「まあ、まあ、目の前で馬が消えたら……どういう反応をしてくれるかしら」
まずは馬だけを異空間収納に収納する。
「わぁっ」「な、なんだーっ!?」
つい今の今まで触れていた馬が突然消えて、盗賊たちはかなりびっくりしただろう。
「さあ、お次はあなたたちね」
その場にいた半分ほどの盗賊たちの身体から黒い棘が生えた。
串刺しになって佇む死体は、断末魔の声すら残すことができなかった。
「うわぁーっ!」
「何が起きてる……」
たっぷりと恐怖を与えてから、ジェラルディンは残り半分の盗賊も串刺しにし、そのまま収納した。
その頃には騒ぎを聞きつけ、建物や洞窟から走り出て来るものが現れた。
その連中をジェラルディンは建物ごと収納してしまう。
「これでずいぶんとすっきりしたわね。次は洞窟だけど……さて、何があるでしょうね」
丹念に探査して、内部の状況を確認すると、ジェラルディンは大きく深呼吸した。
「さあて、さて、出ていらっしゃい、盗賊さんたち」
ジェラルディンのレース編みを台無しにした報いは受けてもらう。
恐怖と絶望をたっぷりと味わって、本来なら憲兵に突き出したいのだが、単独でここまで来たことが発覚するので、盗賊たちには今ここで死んでもらうつもりだ。
「その前に一度、洞窟内を見て回りましょうか」
影から影へと移りながら、洞窟の中に入ったジェラルディンは、こちらに向かって来る男たちからつい習慣で身をかわし、思わず笑ってしまう。
「さようなら」
こうして異空間収納に収納すると、まだその場にいるものたちには、仲間が一瞬で消えたように見えるだろう。
そしてまたパニックが広がっていく。
中には泣き叫ぶものも出てきたのだが、そこに力強い声で叱咤する存在が現れた。
その男は数人の部下?を従え、周りのものとは見るからに違う、上質な防具をつけている。
ジェラルディンが見ていると彼は “ お頭 ”と呼ばれていた。
「あなたが私のレース編みを台無しにした張本人ね」
何もないところから現れたジェラルディンに、盗賊たちは目を瞠る。
“ 頭 ”と呼ばれた男は面白そうな表情を浮かべたが、それは一瞬の事だった。
何の前触れも無く、自身の腹から生えた黒い棘。
防具を下から押し上げ貫通したそれは、当然のことながら血塗れで、地面に血溜まりが広がっていく。
周りでは自分の部下全員が串刺しになっていた。
「私が気分良くレース編みをしていた馬車をひっくり返しおじゃんにした。
その罪は命をもって償いなさい」
まだ意識のある彼の前で、次々と部下が消えていく。
「はい、終わりよ」
盗賊団の頭と呼ばれた男が最期に感じたのは、自身の身体からまるで栗のイガのように生える棘だった。




