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215『薬種ギルド』

「お嬢様、これが今うちで思いつく、一番価値のあるものだと、思う」


 お茶の時間を終え、真面目な態度で布包を前に置いたサランは恭しく布を開いた。


「……剣ね」


「剣ですね」


 そこにはミスリル製だが何の変哲もない剣が鎮座していた。

 当然、それを見たジェラルディンの反応は薄い。

 サランは冷や汗が流れるのを感じた。


「あのっ!

 夕方になったら親父が戻ってくるんで、その時またきてくれねえか?」


「あら、オーナーさんがいらっしゃるの?」


「主人様、その御仁なら店に出てない質流れの品も融通してくれるかもしれませんよ」


「そうね、それまでまたそのあたりを見て回りましょうか。

 ご店主、今までのお勘定をお願い。

 その剣もいただくわ」


 もちろん、銅貨一枚も値切ることなく、すべて言い値で買い上げたジェラルディンは、日暮れの頃にまた来ると約束すると店を後にした。

 ジェラルディンとラドヤードの2人を送り出したサランは、扉を閉めてその場にへたり込んでしまう。


「何だって言うんだよ、あの2人」


 彼が立ち直るのに、暫しの時間を要した。



「あの方、店主ではなかったのね」


「【鑑定】も持たない店主というのもおかしいと思っていましたが、そういう事だったのですね」


「私、質屋というものを初めて知りました」


「そうですね。

 普通は金策のためならあっさりと売ってしまいますし、ああいう店は減って来てますね」


「今まで見たことがなかったけど」


「連合国家である、この国だからこそ残っているのかもしれません」


 ちなみにジェラルディンたちが今まで通って来た国々では、今は【質屋】というシステム自体が絶えている。




「あら?

 こんなところに薬種ギルドがあるわ。

 薬種ギルドって聞いたことのないギルドね」


「俺が生まれ育った国にはありましたよ。

 大雑把に言えば、薬に関係するすべてのものを司るギルドです」


「まあ、そんなギルドがあるのね」


 ジェラルディンは俄然興味が湧いてきた。


「行ってみますか?」


「ええ、何か珍しい薬草や、私の知らないレシピなどを売って貰えれば嬉しいわ」


 ワクワクしながら扉を開けると、中は冒険者ギルドとも、商業ギルドとも違う雰囲気である。


「こんにちは」


「いらっしゃいませ」


 受付カウンターのようなところにいた女性職員が揃って挨拶してきた。

 ジェラルディンは小さく会釈する。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「こんにちは、私は旅の薬師なのですが、何か珍しいものはないかと思い参りました」


 見るからに育ちの良さそうなジェラルディンを見て、年長者である職員が立ち上がった。


「では、どうぞこちらへ。

 薬種ギルドのカードはお持ちですか?」


「いえ、薬種ギルド自体初めてです」


「では、申し訳ございませんがカードを作らせていただいてよろしいですか?

 当ギルドでは、ギルド会員でないと取り引き出来ないのです」


「はい、大丈夫です。

 ラドもついでに入っておく?」


 1人金貨1枚を払って薬種ギルドに登録した2人は、具体的な話をするため奥の部屋に移ることになった。



「さて、ルディンさん。

 旅の薬師とお聞きしましたが」


 担当者として現れたのは初老の女性。

 髪を短く切り、男装をしている。


「はい、現在隊商とともに旅をしているのですが、時間ができたのであちらこちらを見て回っていました」


「なるほど。

 で、当ギルドでどのようなことを?」


 女史の片眼鏡の奥の瞳がキラリと光る。彼女はどうやら、ジェラルディンが買い取りを希望していると思ったようだ。


「この地方独特の薬草や素材、レシピなどを購入したいと思っています」


 女史の眼差しは冷たく、言葉も硬い。


「素材などは問題ありませんが、レシピの方は信用とそれなりの対価が必要です」


 かなり警戒されているようだ。


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