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206『チーム・ジェラルディン』

「あら、お疲れ様。

 どうぞこちらにいらして?

 まずは【洗浄】ね」


 視線はテーブルの上の料理に釘付けのドゥワームが、何もないところで蹴躓きながら近づいてきた。


「あの……本当にいいのですか?」


「もちろんよ。

 これからバーゲンまで、私たちはチームでしょう?

 お食事は私に任せてちょうだい」


 席に着いたドゥワームは、恐る恐るスプーンを取り上げ、スープを掬った。

 そして口にする。


「美味しい、です」


 ドゥワームの目からホロリと涙が溢れ落ちる。

 すでにラドヤードは主人とドゥワームの分を取り分けて、あとの分をボウルごと抱え込んだポテトサラダに舌鼓を打っていた。


「コンソメの按配が最高ね。

 オニオンが美味しい」


 ジェラルディンは目を細めて上品にスプーンを進めている。

 そのあと3人は言葉少なに食事をし、ひと息ついたところでジェラルディンが話しはじめた。


「ドゥワームさん、私たちはこういった隊商に参加して旅をするのは初めてなのですが、隊商ってこういうものなのですか?」


「いえ、お昼にもお話しした通り、今回は特別です。

 馬車の数に驚かれたかもしれませんが、護衛の冒険者も例外です。

 実はこの先のいくつかの町で、まだ馬車は増える予定なんです」


「なるほど、それで納得した。

 あまりにも護衛が多いので何事かと思ったんだ」


「馬車の数次第では、もう少し護衛を増やすかもしれないと父が言っていました」


 ジェラルディンがまったく知らない世界の話が進んでいる。

 そしてこれから最低60日間、行動を共にする隊商というものに興味を覚えた。


「実は僕は、今回初めて馬車を任されたんです。

 今まで何度か父に付いて隊商に参加してきましたが、これが2日前に突然言い渡されてびっくりしました」


「それは……」


 思わずジェラルディンは目を泳がせた。これは完全に自分たちのせいだろう。


「でも、嬉しかったんです。

 父は、貴人の方なので失礼無いようにと言いましたが……よかった」


 ジェラルディンたちが、話しに聞く貴族と違うことにホッとしたのだろう。

 彼女がその気になればどれだけでも残忍になれることをドゥワームは知らない。


「そこで提案なのだが」


 ラドヤードが手を挙げてドゥワームに話しかける。


「主人様は原則、このゲルで寝起きされる。

 夜間の夜番は、護衛たちも担っているんだろうが、このゲルの周りは俺がする。

 あんたは馬車の操作に集中してもらいたいので、夜はしっかりと寝てくれ」


「お言葉はありがたいのですが、いいのですか?」


「ああ、俺は昼間、馬車で眠れるから」


 ドゥワームは出発の前に父親から、夜間の警備に関してはなるべく父親の馬車に近いところに位置どり、あちらの護衛の保護下にいるように言われていた。


「ドゥワームさんは馬車のメンテナンスと馬の世話をお願いするわ。

 それとこれからの行程の説明もお願い」


「はい、わかりました。

 早速ですが明日の予定です」


 ドゥワームは懐から地図を取り出した。それは彼が自ら写しとり、色々な注意点などを書き込んでいるものだ。


「今朝、出発してきたマンセはここです。そして今いる野営地はここ、明日の昼はこの休憩地……ここはこのように小川が流れていて、水に困らないのです。この休憩地で馬を休ませて、夕刻こちらの村に宿泊します」


「ありがとう。

 こういう話し合いは毎日、夕食後に持つことにしましょう。

 他に、何か思うことがあれば、遠慮なく言ってちょうだい」


 旅の間限定だが “ チーム・ジェラルディン ”の誕生だ。


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