185『討伐』
「【収納】【収納】」
あっという間に2頭とも収納して、終わり。
それでも警戒を怠らないジェラルディンは、あたりを探索してもう他にいないことを確認して影空間に戻った。
そして皆がいる、トロールとの激突の場に急いだ。
おそらくだがラドヤードはジェラルディンがいない事に気づいている。
……面倒臭いことだが、甘んじて叱りは受けるつもりだ。
トロール戦は一進一退を繰り返していた。
ジェラルディンとしては焦れったいこと、この上ない。
「収納できれば早いのに。
でも大っぴらにできないから、今回は皆様に頑張っていただくしかないわね」
ジェラルディンがいなかった僅かな間にも数人の怪我人が出ていたようだ。
見たところ、それほど重篤ではなさそうなので、まずは患部を水でよく洗う事にする。
「このくらいなら傷薬で治りそうね」
負傷者を治療するように言われたが、際限なくポーションを使えば、あとで大変なことになるだろう。
本来なら貴重なポーションは、とても高価なのだ。
「ポーションを使わないのなら、縫った方がいいかしら」
そんな恐ろしいことを呟いているジェラルディンを前にした兵士は堪らない。
トロールにぶっ飛ばされて這々の体で逃れてきた兵士は最早涙目だ。
「あら、聞いていたの? ごめんなさい。
ギルドマスターさんと詳しい使用状況を打ち合わせていなかったの。
心配しないで、あなたは軽症よ?」
そんな遣り取りをしていたら、脇腹が裂けた冒険者が運ばれてきた。
彼は集合場所で見た覚えがある。
「この人はポーションでなければダメね」
ジェラルディンは中級のポーションを2本と空の木箱を取り出して、まずは患部に1本振りかける。
そして意識を取り戻した男にもう1本渡して飲むように言うと、次の患者の元にいった。
常人では考えられない跳躍力で飛び上がったラドヤードのバスターソードが、トロールの棍棒を持つ方の手の、肩から先を切り落とす。
その瞬間、潮目が変わったかのようにトロールに群がった第二班の騎士や冒険者が、あるものは踵の腱を狙って得物を叩きつけ、あるものは膝裏を重点的に攻撃する。
棍棒を持たないトロールはその危険度が一気に下がり、とうとう立っていられなくなったトロールが膝をつくと、あとは数の暴力でその生命力を削っていった。
2頭目のトロールが倒れ臥した瞬間、そこにいた騎士と冒険者の全員が歓声を上げた。
ここに前代未聞、進化したトロールの討伐は終わり、皆は湧き上がったが、少なくない犠牲者が出たのを忘れてはならない。
現に今もジェラルディンの元には続々と怪我人が運ばれてきていて、メッシーニの許可のもとポーションを湯水のように使い治療していた。
「……ごめんなさい、この人はもう駄目だわ」
運ばれてきた患者の中には、もう事切れてそれなりの時間が経ったものもいる。
さすがにジェラルディンのポーションでも、死人は生き返らせない。
いわゆるトリアージに近いことをし、先ほど騎士団の救護テントで一番最初に治療した兵士を助手として次々とポーションを使っていった。
その結果、空瓶がうず高く積み上がっていく。




