184『遭遇』
そうこうするうちにメッシーニの話が始まった。
「まずはこの場に集まってくれた諸君には礼を言う。
これからいくつかの班に分けてトロールに突撃するわけだが、騎士団だけで攻撃していた時より数倍の攻撃力を発揮できるわけだ!
第一の班はトロールの意識を撹乱する弓隊だ。
まずは遠距離から弓を射るわけだが、その鏃に毒を……」
云々と続くギルドマスターの話の中、ジェラルディンはラドヤードとともに目立たない後ろの方にいた。
「どのグループに配置されるかしら」
ジェラルディンはワクワクである。
「いい加減にして下さい。
いいですか? どのような時でも俺から離れないで下さい」
ふたりがそんな遣り取りをしているなか、第二班のメンバーの名前が呼ばれていく。
そんななか、第二班先発アタック隊でラドヤードの名が呼ばれた。
だがジェラルディンの名はない。
舌打ちしたラドヤードはそのままズンズンと前に歩いていく。
そしてメッシーニと視線が合うと、それだけで相手を殺せるほどの勢いで睨みつけた。
メッシーニとしてもラドヤードの戦力は貴重だ。
ここに来る前、クメルカナイでバルタンがダンジョン最高到達階層更新の成果として二人ともA+ランクに昇格させていたのだ。
こんな辺境の町のギルドには高ランクの冒険者は数えるほどしかいない。
メッシーニがラドヤードを戦力として期待したのは当然のことだった。
「大丈夫よ、ラド」
「何をおっしゃるのです。
護衛の俺がお側を離れるなど」
「じゃあ私も第二班に入れてもらえばいいの?」
「馬鹿な事を仰らないで下さい。
俺が一班から外れて主人様と同じ班に入るか、主人様が後方で控えるかどちらかです」
「一つ目はともかく、後の方はつまらないわ」
ちょっとだけでも活躍したいジェラルディンはぷっくりと頬を膨らませている。
「主人様……」
結局第三班にもジェラルディンの名前はなく、結局後方支援の班に入れられたのだが、もちろん彼女は面白くない。
後方陣地に残されることはなかったが、その不満を抑えることはなかった。
影の中に潜んで、こっそりと現場に着いていく。
少し後ろからラドヤードの背中を追い、あたりの探索も続けた。
「なるほど……
トロールが3頭いて、1頭はすでに死んでいるのね。
あら? これって、でもまさかね?」
ジェラルディンは新しく探索に引っかかった対象に意識を向ける。
まだまだ視界に捉えられる距離ではないが、それでもいくつかわかることがある。
「大型魔獣が2頭?」
第二班から外れて、ジェラルディンは新たな魔獣を探査した方に歩みを向け、それがどのような魔獣なのか覗った。
そしてそれは唐突に姿を現した。
「何、これ」
元々ジェラルディンはあまり魔獣に関して詳しくない。
今眼前にいる魔獣を前にして少し後方に下がると、影空間から出てしみじみと観察した。
全長はおよそ8〜9m。
体高は5mほどで全長に含まれない、ネズミのような3mほどの尻尾がある。
体毛はハリネズミのように尖っていて、それだけで1mほどある。
それでいて頭部は鳥のように嘴があって、手足には鋭い爪がある。
「なんだか前に似たようなのを見たことがあるような気もするけど……」
その時、ジェラルディンの気配に気づいたのか、魔獣の毛が針のように逆立った。




