183『ジェラルディンの思惑』
傷が塞がり、陥没していた頭蓋骨も元通りになった頭部を確かめ、ジェラルディンは最後の左脚を見つめた。
膝上できつく縛ってあるので出血は止まっている。
だがそのせいで血の通わない膝から下はどす黒く変色していた。
「これは……どちらの方がいいかしら」
このまま接合すべきか、それとも千切れかけた部分を切断して新しく生やすべきなのか。
「うん、まあこのままでいいかしらね」
なるべく元通りの形に近づけて、脚を置くとまたポーションを振りかけた。
「まあ、若いからポーションの効きもいいでしょう」
見る見るうちに接合していくさまは、まるで魔法だ。
現にジェラルディンにこき使われている兵士は、口をポカンと開けて脚がくっついていくのを見ている。
「さあ、あとはこのポーションを飲ませるだけよ。
こぼさないようにちゃんと飲ませるのよ」
もし彼が、このポーションの価格を知ったら気絶してしまうのではないだろうか。
さらに奥の寝台に横たわる兵士たち。
彼らはすでにもの言わぬ骸に成り果てていた。
ジェラルディンは最後に見た騎士をチラリと見て、テントをあとにする。
「ルディン嬢、お待ちくだされ」
ラドヤードを引き連れて、未だ騒ぎの収まらない集合場所に向かうジェラルディンに、この場の責任者のひとり、ギルドマスターのメッシーニが声をかけてきた。
「ルディン嬢、今のはどういったカラクリなのですか?」
「カラクリ?
私はポーションを使っただけよ。
元々私は薬師ですし」
「なんと!
ルディン嬢は薬師だったのですか!
では、此度の討伐隊に負傷者が出た場合、買い取ることは可能でしょうか?」
「ええ、もちろん相応の対価をいただければ問題ございませんわ」
その効果をギルドマスターが認めるポーション。
それを見せつけるために、幾分過剰気味にデモンストレーションしておいた。
ジェラルディンはメッシーニが救護テントを覗いていた事に気づいていたのだ。
「その時は冒険者ギルドが責任持ってお支払いさせていただく」
セコく営業しているわけではないが、思い通りになってほくそ笑む。
ポーションによって回復した兵士を含む騎士団と冒険者たちとの合同討伐隊は、森の奥に一旦引いていたトロールを追って前進していた。
一頭は無力化(両腕を切断)しているが、このトロールたちは特別に進化した、もうホブ・トロールと言うべきものであるかもしれない。
「まずはどう攻める?」
ラドヤードに抱えられたジェラルディンが、耳許で囁いた。
「主人様の魔法を使わないのなら、まずは弓を射かけてそちらの方に惹きつけ、その隙に攻撃となりますが……
どうでしょう?
同じことはやってきていると思いますが」
「魔法士がいないというのが痛いわね」
進んで冒険者になる魔法士など、滅多にいない奇特な存在なのだ。
「どうするつもりですか?」
「そうね、足留めくらいしてあげてもいいけど、ラドはどう思う?」
「俺は出来れば、主人様には大人しくしていて欲しいです」
珍しくジェラルディンは声を上げて笑った。




