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176『冒険者ギルド、ワンダイク支部』

 無事、町の中に入ったジェラルディンたちは、そのまま冒険者ギルドに向かった。


「こんにちは。冒険者ギルド、ワンダイク支部にようこそ。依頼ですか?」


 扉を開けて入った途端、受付の女性職員が明るく挨拶してきた。


「こんにちは。

 いえ、依頼ではありません。

 私どもは先ほどこの町に到着したのですが、まだ何もわからないのでとりあえずここにお邪魔した次第です」


 冒険者としても巨漢と言って差し支えない男と、小柄な少女。

 だがこの少女は見た目通りの存在ではなさそうだ。

 女性職員はきりりと気持ちを引き締めた。


「左様でございますか。

 では何をお聞きになりたいのでしょうか?」


「そうですね……

 まず、先ほど出立して行った騎士団?がらみの魔獣のこと。

 それから今このギルドでの魔獣の素材の相場とか、あとはそうですねぇ、良い宿を紹介していただきたいです」


「わかりました。

 では、こちらにお掛け下さい」


 女性職員……マリリはこの2人に付き合うことにした。

 どうせ今、ここ冒険者ギルドは閑散としている。

 冒険者たちは、なぜか急に増えた魔獣を討伐するため、あちこちに散っていた。


「ご質問にお答えします。

 先ほど出立して行ったのは我が領の騎士団に相違ありません。

 街道をこの先半日ほど進んだところにトロールが3頭現れて、隊商がほぼ全滅させられております。

 奴らはこれに味を占め、街道上から離れないでいます。

 さらにこちらに向かって来ていて……」


「トロール3頭にそれほど手こずるとは。何か特別なのでしょうか?」


「それは……普通のトロールではないのです」


 トロールとはいわゆる巨人族に属する魔獣で、普通は3〜5mの愚鈍な人型魔獣である。棍棒などを振り回し人を襲うが、動きが鈍いためそれほど被害が出るはずもないのだが。


「身長はおよそ8m、武器はどこで手に入れたのか鉄の棍棒を持っていて、動きも素早いのです」


 ジェラルディンとラドヤードがちらりと視線を交えた。

 これはダンジョン由来の魔獣という可能性が大きい。


「あの、質問なのですが、このあたりにダンジョンはありますか?」


「ダンジョン? いいえ。

 ここから一番近いのは隣国のクメルカナイですが、何か?」


「あのですね、これは私の想像なのですが……近隣にダンジョンが発生しているということはないでしょうか?」


 ジェラルディンの話を聞いたマリリの顔色が、見る見る変わっていく。


「ち、ちょっとすみません」


 座っていた椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がったマリリは、そう断って奥に駆け込んでいく。


「あらぁ、困ったわね。

 宿の紹介をしてもらってないわ」


「あのぉ、私で良かったら紹介させて頂きますが」


 弱々しい声のする方に視線を向けると初めてそこに職員の女の子がいるのに気づいた。

 何とも存在感のない人物である。


「あら、助かるわ。

 条件は従者用の部屋がある、スィートがいいわね」


「それでは町一番の高級旅館(ホテル)【麗しき戦乙女】を紹介させていただきます」


 ていねいに場所を教えてくれた彼女に礼を言い、2人はギルドを後にした。


「また、明日にでも来ればいいわ。

 お互いに少し楽をしましょう。

 ね? ラド」


 十分に酷使した自覚があるジェラルディンは、この町の居心地がよほど悪くない限り少し長居しようと思っている。


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