155『ボス戦!』
この階層にはオークの上位種がいる。
【死の舞踏】の連中も前回の事があるからだろう。
早々と着いたボス部屋前に落ち着いてから、自分たちだけ引き返してオークジェネラルを狩っていた。
「ああしたところを見ると手元不如意と言うのは本当のようね。
上級冒険者にそんな事あるのかしら」
「ありますよ、主人様。
大きな括りで言えば俺もそうですし、武器や防具などの新調や怪我の治療、それに単純に賭け事にのめり込んだ、という場合もあります」
「もう……ラドは違うでしょう?
そうね、彼らは前回、危うく全滅するところまでいってたようだもの。
その可能性があるのね」
「あいつらの装備も得物もそれなりのものを持ってます。
それにこの町のポーション事情はそれなりのようですし、怪我の治療……治癒師にそれなりの金額を払っていると思いますよ」
「そう言えば私、この町でポーションを卸してないわ」
ジェラルディンは今思い出したかのように呟いた。
バルタンとの遣り取りで、機会はあったが必要性を感じなかった。
自分から積極的に売り込む気がなかったので、今までそのままになっていたのだ。
「ギルドに戻ったら声をかけてみようかしら」
「そうですね。きっと喜びますよ」
ダンジョン内とは思えない、まったりとした時間が過ぎていく。
「おはよう、皆さん。
今日はボス部屋挑戦ですが準備はよろしいですか?」
弓師の男が焚き火の始末をしていた。
今日のジェラルディンはローブの下に胸当てをつけている。
「では行きますよ。
イレミアスさん、扉を開けてください」
ジェラルディンたちが挑戦した時と同じように、軽く触れるだけで扉が開いた。
暗闇の中騒めく気配に、ジェラルディンは【ライト】で視界をクリアにした。
「っ!? これは?」
ジェラルディンたちと【死の舞踏】合わせて7人の前に現れたオークロードの数が、前回とは明らかに違う。
「お供の数がずいぶん多いわね。
イレミアスさん、前回もこうだった?」
「ああ、でもあの時よりも多いかもしれない」
どういう事かとラドヤードを振り返ると、よくある事ですよと説明を始めた。
「俺も以前、別のダンジョンで体験した事があるのですが、これはボス戦に挑戦した冒険者の人数によってお供の魔獣の数が増えるタイプです。
俺たちは10匹だったでしょう?
【死の舞踏】は25匹だったんじゃないかな」
「ああ、そのくらいだった」
「おそらくボスの地力も上がってるのではないかと。
少し注意した方が良いかもしれません」
「そうね。
とりあえず、打ち合わせ通り最初は私たちは手を出さないわ。
でも様子を見て臨機応変にね」
「では、散開!!」
イレミアスの合図で慣れた位置取りを取る。そしてまずは弓師が矢を射り、タンクが前進して押し寄せてくるオークロードを押し返していった。
後衛の魔法士から火球が放たれ、炸裂し、怯んだところを2人の戦士が剣を振るう。
お供の魔獣、オークロードの数は多いが、さすがにA級パーティー、手堅く数を減らしていっている。
ラドヤードの理論で言うと35匹いる事になる。
それを5人の連携で少しずつ屠っていくさまは、ジェラルディンには目新しいもので目を見開いて、見入っていた。
「ああ、態度は悪いですが、実力はそこそこですね」
いつものようにジェラルディンを抱えたラドヤードが批評している。
「このまま、オークロード戦は問題ないでしょう。
だがレッサードラゴンはどうでしょうね」
これは自分の予測だがと前置きしてラドヤードが話し始めた。
「こういった攻略人数によってお供の数が変わるボス部屋の場合、魔獣自体の強さも上がる可能性があるのです。
……もし、レッサードラゴンがそうなら、少し拙い気がします」
「もしそのようならラドが手助けに入って。
私は最後まで手を出さないつもりよ」
「わかりました。
その方が良いと思います」
その時、ようやく8匹目のオークロードが倒れ臥した。




