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140『歓待と謎の魔獣』

 最深到達階層を一気に50階層まで更新させて帰ってきた2人のことは、あっという間に町中に広がっていった。

 とりあえず今は冒険者ギルドで足留めされている。


「何か……ずいぶん大袈裟ね」


 ジェラルディンには戸惑いしかないが、もう何十年も更新されてこなかった最深到達階層が一気に12階層も進んだのだ。

 周りがお祭り騒ぎになるのも無理がない。


「いや、本当に良くやってくれた」


 ギルド内の応接室で、ジェラルディンとラドヤードはギルドマスターから長々と労いの言葉を受けていた。

 だがもう、それも飽きてきている。


「皆様の祝福、ありがたいことですわ。

 でも今回はちょうどキリが良かったので戻ってきただけですの。

 準備が整ったら又潜るつもりでいますので、もうこれ以上は……」


「何と! ルディン嬢。

 この上、まだ攻略を続けられるとは!

 いやはや、これは凄い!!」


 興奮したギルドマスターは今にも倒れそうな様子だ。


「それと、そろそろ下に行って素材の買取をお願いしたいのですの。

 色々名前のわからない魔獣もおりましてね、そちらの方もお話ししたいと思っています」


 まず第一は例の “ ハリネズミトカゲ擬き ”であろう。

 この魔獣の情報提供はしっかりとしておかなければならない。


「ではギルドマスター、また近々お目にかかるのを楽しみにしておりますわ」


 応接室から辞して、ジェラルディンは階段を降りて素材買取り棟に向かった。その姿をそこにいるすべての人間の目が追う。


「何か……面映ゆうございますわね」


 少し顔を赤らめて、ラドヤードに後ろを庇われながらジェラルディンは、足早に立ち去った。



「よう! おふたりさん!おめでとう」


 いつも解体を受けてくれるここのチーフが、似合わない笑顔で迎えてくれる。

 そしてその場にはもうバルタンが待機していた。


「ありがとうございます。

 早速ですが見て欲しい魔獣があるのです」


 ジェラルディンの手が動いて、何もない空中から一匹の魔獣を取り出した。

 それは意外にも小さく、見たところ50㎝もない。


「これが【冒険者殺し】

 隠形して、この針を射出する事で、冒険者側は何が起きたのかわからないうちに戦力を削がれていく。

 わかっていれば対処のしようもありますでしょうが、かなり難しいでしょうね。ちなみにこれは38階層に出現します」


 バルタンが唸った。

 解体場のチーフは尾の先端を掴み、持ち上げて覗き込んでいる。


「こいつは見たこともない魔獣だ。

 こんな奴が38階層にはいるのか」


「おそらくですが、以前に38階層まで行かれたパーティーはこの魔獣にやられて撤退を余儀なくされたのではないでしょうか?」


「なるほど……

 この魔獣に関しての記録はありませんでしたね。

 いや、ルディン嬢、ありがとうございます。これで後に続く者たちが無駄に命を落とすことがなくなります」


 情報があったとしても、あそこまでたどり着けるかどうかはまた別の話だ。

 ラドヤードは自分が屠った魔獣を思い出し苦笑した。


「とりあえず今回は片っ端から収納して持って帰ってきました。

 びっくりするような大物もおりますのよ」


 ジェラルディンはにこやかだ。

 だが内心は早く家に帰ってゆっくりしたいと思う。

 なのでこの後待ち受ける騒動は、彼女の怒りに火を着け、燃え上がらせることになるのだ。


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