130『カレー見参』
野菜の甘みとスパイスの香り、そして一刻置いて辛さがやってくる。
「初めて食する味だわ。でも凄く美味しい!」
「美味いです!」
食欲をそそる、スパイスのピリッとした辛さと香り。
あっという間に、掻き込むように食べてしまったラドヤードは少し物足りなそうだ。
「うふふ、ちゃんとサラダやメインのお肉を平らげてくれたら……もう一度もらってきてあげるわ」
それを聞いたラドヤードの目の色が変わった。
今まで見たことのない速さでサラダを食べ、分厚いステーキに齧り付く。
そしてすべてが腹の中に収まって、ラドヤードはとても良い笑みを浮かべた。
「はいはい、約束どおり行ってきます」
そして戻ってきたジェラルディンが鍋ごと持っているのを見て、ラドヤードは狂喜した。
早速皿に白飯をよそってカレーをかけて食べ始める。
「ええ、もう何を言っても聞こえてないようね。
私はもう休ませてもらうわね。
後片付けだけ、よろしく」
ちなみに、翌朝聞いてみたところ白飯はすでに無く、残ったカレーは大事に仕舞われていた。
順調に再開したダンジョン攻略はサクサクと進み、小腹がすいてくる頃には12階層に到達していた。
そしてそこの下に向かう階段の手前で、思いもかけない再会を果たすことになる。
「やあ、ルディンじゃないか」
A級パーティー【死の舞踏】のリーダー、イレミアスが軽く手を上げて話しかけてきた。
「まあ、イレミアスさん、ごきげんよう」
何ともダンジョン内らしくない挨拶に、イレミアス以外のパーティーメンバーが苦笑している。
「俺たちは昼休憩をしているところだ。
ルディンも一緒にどうだ?」
昼食を共にどうだ?と誘って来たが、ジェラルディンは彼らにあまり詮索されたくなかったため、差し障りないように断った。
そして先に向かう。
「では、お先に失礼します」
階段を降りたジェラルディンは真剣な顔でラドヤードに話しかけた。
「ラド、悪いけど出来るだけあの人たちとの距離を取りたいの」
ラドヤードは主人にそれ以上言わせなかった。
水筒の水をあおるように飲み、ジェラルディンを抱える。
そして剣を手にすると走り出した。
「ごめんなさいね。
私、どうしてもあの人たちを好きになれないの。
出来るだけ接触したくないのよ」
「大丈夫です。
次の階段で少し休憩して昼食を摂り、それから全速力で駆けましょう。
それと、なるべく魔獣は狩らないようにして、あいつらに残しておいてやりましょう」
嫌がらせ兼足留めにするため、なるべく魔獣は避けて通り【死の舞踏】の連中との間を空ける。
そしてなるべく早く20階層を突破し、まずは第一の目的である30階層に到達したいと思っていた。
階段を降り立ち、18階層に到達したジェラルディンたちはルートから少し外れたところにゲルを出した。
「結構進んできたと思うけど、あの人たちとはどのくらい離れたかしら」
「主人様、心配なさらなくても大丈夫です。
自惚れるわけではないですが、主人様と俺ほどの速度でダンジョン行を出来るものはいません。
それに連中には魔獣も置いてきましたから、間違っても追いつかれることはありません」
ラドヤードの言葉に安心したジェラルディンは夕食を済ませ、影空間の隠れ家に向かった。
その頃【死の舞踏】の面々は16階層の階段の降り場で荒い息を整えていた。
彼らとしても破格のスピードで進んできた。群がる魔獣を狩りながら、それを回収してようやくここまでたどり着いた。
「畜生!
あいつらどんだけ早いんだよ!!」
イレミアスは背負っていた荷物を地面に叩きつけた。




