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125『ダンジョン内、5日目朝』

 ジェラルディンたちが20階層に到達したのはダンジョンに潜って5日目の朝だった。

 ここに来るまでジェラルディンは主にオークを狩り、途中見つけた群れではオークジェネラルやオークロードを見つけて、嬉々として収納した。


「ラド、オークの上位種の睾丸は質の良い精力剤の素材となるのよ。

 でも最高なのはオークキングなの。

 このダンジョンにはいないかしら」


 薬師の心得のあるジェラルディンらしい物言いだが、ラドヤードは雄として複雑である。

 事実、背筋が寒くなった。


「でもね、本当は蛇種の方が効能が高いの。

 世間ではオークの精力剤が万能のようなことを言うけど、子授けに関してはコブラ種やバイパー種の上位種の睾丸が最高なのよ。

 何しろ蛇種の精子は交尾後雌の子宮で1年以上生き続けると言うわ。

 私が読んだ文献では、キングクリムゾンバイパーの睾丸を素材に作られた精力剤は百発百中の効果を見せたそうよ。

 これは各国王家に伝わる秘薬なのでしょうけど、一度は作ってみたいものね。

 だからこのダンジョンの下層で蛇種の上位種がいるか楽しみなの」


 一部、たとえ護衛で奴隷であるラドヤードとしても耳にしたくなかった話も含まれていたが、ジェラルディンの情熱はそれほどなのだろう。


「このダンジョンの今までの最高到達階層は38階層になっています。

 ダンジョンの場合、到達した本人がギルドに戻って申告して、初めて認められるんです。

 だからそれよりも深く潜って帰って来れなかったものもいるでしょう」


「ねえ、素朴な疑問なのだけど、ギルドはどうやって最高到達階層を確認するのかしら?

 まさか申告制ではないわよね?」


「主人様は、このダンジョンに入る時に入り口の監視員から、これを渡されたのをご存知でしたか?」


 そう言ってラドヤードが取り出したのは銅色をした小さなメダルだ。


「あら、そうだったの?

 全然知らなかったわ」


「これが冒険者の到達階層を示してくれる魔導具なんですよ。

 俺が知る限りでは、この大陸のすべてのダンジョンが導入している、便利な魔導具ですよ」


 今度は、ジェラルディンはこの特別な魔導具に興味を示したようだ。


「このメダルを監視員が持つ魔導具に通すと到達階層が示されるんです。

 前回、お試しで潜った時もやりましたよ?覚えていませんか?」


 興味のないことにはとことん意識の向かないジェラルディンである。


「ごめんなさい。記憶にないわ」


「このメダルは一回一回返却するんです。そうでないと盗難もあり得ますからね」


 なるほど、そのメカニズムはまったくわからないトンデモ魔導具だが、その使用法などは良く考えられている。


「そうなのね、良くわかったわ」


「主人様は今回、どのくらいまで潜られるつもりですか?」


「そうねぇ……」


 ジェラルディンは考えてみる。

 そういえば今回の日程は何も考えていなかった。


「とりあえず、あと5〜7日くらいを目処でどうかしら?

 それでキリの良いところまで延ばせばよいのでなくて?」


「まあ、我々は何か期限があるわけでもなし、装備や食糧に関しても問題ないですからね。

 進捗具合が良ければ、そのまま深層に行っても良いと思いますよ」


 そう、ジェラルディンたちにはすっかり忘れていたことがあった。




 その日、ナナヤタ不動産にはポリーナの姿があった。


「今お世話になっているお屋敷のご主人様が、私に鍵を預けずにダンジョンに行ってしまわれたのです。

 お留守中もお掃除を頼まれていて困っているのだけど、合鍵を貸してもらえないかしら?」


 事務所にいた事務員は少し考えて、奥の金庫室に向かった。

 その事務員からポリーナに合い鍵が渡されたのはこういう理由からだった。


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