115『冒険者ギルドの男たち』
「【銀狼の咆哮】に対して捕縛または討伐依頼ですか?」
ここはクメルカナイ第一層の冒険者ギルド。
ダンジョン内でリリが襲われた、少し後になる。
「昨夜の騒動は【英雄の帰還】から厳重な抗議が寄せられています。
我々も朝から連中の居所を探していましたが……そうですか。
そんな依頼が」
「これは某国の王宮からの依頼だそうだ。
奴が絡んだ客はその国の侯爵令嬢らしい」
その令嬢は王室に連なるものだと一瞬で理解したギルドのNo.2である金庫番のハリソンは渋い表情を浮かべた。
「バルバルの奴は何でそんな貴族に絡んだんでしょう?
そもそもあそこのレストランには、一般客は立ち入り禁止でしょうに」
「ある商会の会頭がその場に居合わせていて、そっちの方から回ってきた話なんだが……その令嬢が、かなり若かったそうだ。
それから護衛に奴隷を連れていたらしい」
「それですね」
バルバルは奴隷に対して過度な差別感……むしろ憎悪と言ってよいものを持っていた。
「貴族が奴隷を護衛にして連れてるなんてよくある事です。
その護衛、どんな奴だったのでしょう」
「俺はちらりと見たことがある。
身長は軽く2m越え、おそらく2.3mくらいはあるだろう。
オーガと見間違うような筋骨隆々で、身長ほどもあるバスターソードを持っていた。
あいつはおそらく、どこかの国で上級冒険者だった奴だ」
「それほどの使い手が奴隷に?」
「まあ、色々あるって事だろう。
そして護衛対象のお嬢様は見た目はかなり若い。
ひょっとすると成人していないかもしれない」
「たしかに……
それは目を惹くふたり連れですね」
ハリソンは暫し考え込んだ。
「それから、おそらくこの後落ち着いたら、素材をそれなりに卸してもらえるだろうから、そっちの方は頼むわな」
ハリソンも近隣諸国のギルド会議で、噂になっている2人組のことは聞き及んでいた。
「それは……おそらくバルタンが担当した少女ではないかと」
それなりの数の魔獣の骸を置いていったが、どうやって倒したかわからないほどきれいな状態だったという。
だがハリソンはそれよりも気になることがあった。
「その令嬢が話に聞く【奇蹟を起こす天使】でしょうかね」
「なんだよ、そのこっぱずかしい渾名は?」
基本、クメルカナイから出ないギルドマスターは初めて聞く名に口許を緩めている。
「その名の通りですよ。
あちらこちらのギルドに気分次第でポーションを、それもかなり上質なポーションを卸す薬師です。
聞いたところでは欠損を再生するポーションが一本金貨1000枚の値がついたそうですよ」
「それは……凄いな」
効果の高いポーションは、このダンジョン都市では引く手数多だ。
おそらくこの冬の間滞在するだろう彼女らと、よい関係を築けたらと思う。
「まずは【銀狼の咆哮】だな。
とっとと捕まえて処罰を与えんと、お貴族様は気が短いから」
そんな今、依頼を聞いたそこそこのレベルの冒険者が、ダンジョンに駆けつけていた。
時系列的にはリリを殺したのは、依頼を知った冒険者ではなさそうだ。
では一体何者が?
ダンジョンの中に渦巻く悪意は人知れず近づいてくる。
皆さまいつもありがとうございます。
最近ちょくちょく指摘されるのですが、本作の【恋愛タグ】について。
私自身、この作品に恋愛タグをつけた覚えがないのですが、ついてましたか?
そして消した覚えもないのです……
ハッ! ひょっとしてジェラルディン様からのメッセージでしょうか?!
で、恋愛にはならないと思いますがクリスティアンのライバル?登場します。
ジェラルディン相手ではラブリーになり得ませんが。




