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109『不動産投資?』

「お買い上げ、ですか?」


 ジェラルディンはその問いかけに戸惑った。

 なぜそんな話になるのだろう。


「実はこの物件、賃貸とはいえモノがモノだけにかなりの賃料になるのですよ。

 まずは保証金ですが金貨500枚、これもお出になるときに金貨300枚を返却します。賃料は1ヶ月金貨100枚。

 契約時に金貨800枚をいただくことになるわけですが、こちらの物件買取の場合も金貨800枚なのです。

 いかがでしょうか?」


 いかが、と言われても困ってしまう。

 ジェラルディンはこの町に定住するつもりはないし、町どころかこの国自体通過点だ。

 確かに金貨500枚を捨て金にするのなら、あと300枚足して資産として所有することもアリだろう。

 何しろジェラルディンは、今この場で金貨800枚を支払う事が出来るのだ。


「んん〜

 この件は少し考えさせて頂きたいわ。

 ……今日は保留という事でも構わないかしら」


「もちろんです。

 よく考えて下さいませ」


 ラナバルは和かに微笑んだ。



 ホテルに戻ってきたジェラルディンとラドヤードはレストランで遅い昼食を摂っていた。

 このホテルは、奴隷のラドヤードを連れてレストランに来てもうるさい事は言わない。

 きちんとした、金離れの良い客にはそれがたとえば奴隷を連れていても優遇するのだ。

 何しろジェラルディンたちの場合、ラドヤードが身につけているのは上級冒険者に勝るとも劣らない装備なのだ。


「お嬢様。

 本日のお昼のデザートは山すぐりのジャムを使ったタルトでございます。

 もしよろしければ後ほどお部屋にお持ちしましょうか?」


 少食のジェラルディンに配慮するウエイター。

 ジェラルディンはチップなども惜しみなく与えるため、宿の従業員の間でも評判が良い。


「まあ、それでは今日はもう出かけずにお部屋に居ますわ。

 それからディナーの予約もお願いしますわ。もちろん2人でね」


「はい、かしこまりました」


 テーブルの上に小さな紙包みを置いて、ジェラルディンは立ち上がった。



「それで、ラドはどう思う?」


「そうですね。

 冒険者が不動産に投資するというのは、ままある事です。

 何しろ冒険者はいつ動けなくなるかわからないですからね。

 俺の知り合いにも買った家を貸し出して賃料収入を得ていた奴がいましたよ」


 なるほど、とジェラルディンは考える。


「あの屋敷なら集合住宅か、パーティーもしくはクランに貸し出すのが良いと思いますよ。

 もちろん冬が終わって主人様がここを発つのに代わってですが」


 ジェラルディンはあまり金子に頓着していない。

 今回の支出、金貨800枚も上級ポーションを何本か売ればすぐに取り返す事が出来るだろう。

 ダンジョンに潜って依頼をこなしてもいい。


「そうね……

 では明日、購入することにしましょう」


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