閑話:ハロウィン編
悩んだあげくハロウィン閑話を書いてしまった……。
「「「ハロウィン?」」」
俺の部屋に居たファルとヘレンさんとルリが同時にそう言った。
「ああ、これによると、なんでも今日はハロウィンって日らしいぞ」
俺が片手に持った手紙を顔の横でヒラヒラとさせながら言うと、ルリはその手紙を見つめた。
「それって誰からの手紙なの?」
「母さんからだ。昨日届いたんだよ」
「あ……、そうなんだ……」
急に声が小さくなったルリを見てファルは首を傾げた。
「ねぇヘレンさん。なんでルリちゃんはいきなりテンション下がっちゃったの?」
「えっと……それは……その……、気にしたら負けというもので……」
「むしろ気になるんだけど!?」
母さんからの手紙が来たのはファルがアンティスブルグという国の王子と結婚させられそうになって、アンティスブルグに滞在していた居たときだったので、この場ではファルだけが母さんの手紙を知らない。
逆に言えば、ヘレンさんとルリは既に母さんの恐ろしさの一片を垣間見ているということだ。こうなるのも無理はない。
「そ、それで、そのハロウィンっていうのはどんなものなの!?」
話をそらそうとしたのか、ルリが急かすように聞いてきた。
俺もファルに母さんの恐ろしさを知らせるのは気が引けるので、ハロウィンについての話に戻すことにした。
「えっと……、ハロウィンとは異国で行われているイベントで、例えば魔物に仮装したり、大人にお菓子を貰うイベントらしいぞ」
これを聞いて、ヘレンさんは首を傾げた。
「魔物に仮装……? 中々変わった趣向なのね? 何のためにそんなことを?」
「なんでも昔、このハロウィンって日に魔物達が押し寄せて来たらしいんです。そのとき偶然魔物に仮装していた人間を仲間だと思って襲わなかったという話から今まで伝統になってきたみたいです。他にも悪しき者を寄せ付けないためっていう理由もあるらしいですが。今では毎日の他にも勇者や王様などの人物の仮装をする人も居るみたいですよ」
「あ、意外とまともなイベントなんだね」
ルリが安堵の表情を浮かべたが、俺はそのあとに記されている文章を見て苦笑いを浮かべた。
「いや、母さん曰く仮装したあとに丸腰で魔物の軍勢に飛び込むっていうイベントがあるらしいぞ」
「普通に危ないじゃん! 死んじゃうよ!?」
「『仮装すれば仲間だと思われるんでしょ? それに父さんだって半殺し程度で帰ってきたから大丈夫!』だってさ」
「いや全然大丈夫じゃないよね!? というか多分そんな危険なイベントやってるのアルの両親だけだよ!!」
「だろうな。『ちなみにこの度胸試しイベント、メイドイン私なのよ』って書いてあるし」
「だろうね!」
「……ちなみに、大人にお菓子を貰うっていうイベントはどういうものなの?」
ツッコミに疲れて息絶え絶えになったルリに代わり、ヘレンさんが質問してきたので、俺はふたたび手紙へ視線を戻した。
「トリック・オア・トリート……お菓子をくれなきゃイタズラするぞって意味らしいんですけど、ハロウィンの日は仮装した子供達が色んな家を回ってこの言葉を言ってお菓子を貰うらしいです」
「へぇー! 見ていて微笑ましそうなイベントだね!」
ファルはお菓子を持って嬉しそうにしている子供を想像したのか、『子供達、可愛いんだろうなぁ……』と呟いていたが、ヘレンさんはまだこちらを見つめていた。
「……ちなみに、お菓子をあげれなかったらどうなるの?」
「イタズラされます。まあ子供のイタズラですし対したことはないみたいです」
「あ、そうよね。変に警戒したのが恥ずかし――」
「靴の片足だけ盗られたり、カツラを奪い去られたり、秘密の趣味を周囲に暴露されたりするくらいらしいです」
「地味に卑劣な行為が横行してる!?」
「子供は事の重大性がわからない……だからこそのおちゃめなイタズラらしいです」
「おちゃめで済むレベル!?」
「あとはみすぼらしい衣装に仮装をした子供にお菓子を上げられなかった場合は無理矢理にでも家にある食べ物を取られるらしいです」
「それ仮装じゃなくて普通に飢えてる孤児だと思うのだけど!?」
ルリとヘレンさんは完璧にハロウィンというイベントに対しての不信感が募っているようだが、ファルはまったくそんなことがないようで
「ハロウィンって楽しそうなイベントだね!!」
「「どこが!?」」
意見が割れた三人を見て、俺は口元に笑みを浮かべつつ、予め用意しておいたとあるものを三人の前だした。
「皆、これ、昨日商店街で買ってきたんだが……」
三人が振り向いた視線の先には、俺が用意したお菓子が皿の上に置かれていた。
「皆のために買ってきたんだ。せめてちょっとだけでもハロウィンってのを体験して欲しくてさ」
俺がお菓子を買ってきたのが余程嬉しかったのか、ファルとルリは満面の笑みを浮かべた。
「ほんとに!? ありがとう!」
「それじゃあ僕も――」
ファルとルリがお菓子に手を伸ばしたが、ヘレンさんが二人の手を制した。
「「え?」」
二人して素っ頓狂な声を出してヘレンさんを方を見ると、ヘレンさんは二人に笑みを浮かべながら語りかけた。
「折角アル君がハロウィンっていうイベントの気分を味合わせてくれるっていうのなら、お菓子を貰う前に私たちは言うことがあるでしょ?」
その言葉で二人は察したのか、伸ばしていた手を元に戻したあと、三人同時に俺の方に開いた両手を伸ばした。
「「「せーの、トリック・オア・トリート!」」」
次章なのですが、構想が3分の1程度しか出来ていないので、イメージもまだあまり固まっていません。もしかしたら次の投稿が遅くなるかもしれません。
明日に投稿する可能性もあれば、数日空ける可能性がありますが把握の方よろしくお願いいたします。




