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偽りの夢

「...本当に残るのか?」


「うん」  


イルビアが亡くなって3ヶ月ほど経った頃、

俺はこの村から引っ越しそうとする親達の

見送りをするため、村の入口に来ていた。


何でも、火山灰が降り注いだ土地では、

稲を育てることが出来ないらしい。


だが、ここに居てはイルビアのことを

思い出してしまうため、辛くなるということが

一番の理由だった。


だが、それでも俺は残ることに決めた。


子供一人で残ることなんてさせられないと

反対されたが、村長にどうにか出来ないか

相談したところ、俺を大人になるまで面倒を

見てくれると村長が言ってくれて、それを

聞いた両親は渋々ではあるが納得してくれた。


「アル、村長さんに迷惑かけちゃ駄目よ?

寂しくなったらいつも私の使ってたこの

タオルの匂いを嗅いで思い出してね?

それと何かあったらすぐに手紙を頂戴。

すぐに飛んでくるからね?

あと――」


イルビアが亡くなってから、母親の元々

酷かった親バカはさらに悪化してしまった。


理不尽な暴力は父親だけに振るわれていたが、

場合によっては他の人にもそれが

振るわれるようになっていた。


その理由を俺は知っている。


イルビアが亡くなったことが判明した夜のことだ。


イルビアが亡くなったことのショックで

眠れずにいた俺は、少し風に当たろうと部屋を出た。


そのとき、居間にまだ明かりがついている

ことに気がついた。


ブツブツと声が聞こえたので、そっと

聞き耳を立てたところ


「私があのとき...王都に食料を買いに

行っていれば...! 不安に思ったことを

そのままにせず、すぐに解決しようとしていたら...!」


母さんは自分の行動を悔やんでいた。

そして、もう二度と同じことを起こさないためにも


「アルに関係する不安の芽はすぐに刈り

とらなきゃ...。


あと、イルビアの事を必要以上に

思い出させないためにも今まで以上に愛を

注がないと...! じゃないと、もしかしたらアルまで...!」


母さんだって本当は弱い人間なのだ。


あの親バカの裏には、母さんなりの贖罪に

近いものがあったのだ。


そう考えれば許せ――


「ああ!! でも私が寂しくなっちゃうから

髪の毛を一本でいいから頂戴!!

それが駄目ならいつも着てる服を!!

あ!! 待って! 今着てるその服なら

匂いが染み付いてるわよね!? ねぇ頂戴!!

その服を今すぐ私に頂戴!!」


前言撤回。


明らかに趣味の一部になってる部分があるような気がする。


でも、実はこれも母さんなりの気遣いなのだろうか。


「ごめん、それは嫌だ」


俺がそうキッパリと断ると、母さんは

『そう言うと思っていたわ』と言うと、

どこから取り出したのか、俺の服を手に

持って、それを俺に見せびらかしてきた。


「すでに拝借済みよ!!」


フンスーと鼻から息を出して自慢してくる

母親を、俺は冷めた視線で見つめた。


「わかった。 うん。 ごめん、母さん。

ちょっと半径3m以内に近付かないでくれるかな?」


「恥ずかしながらなくていいのよ?

さあアル、別れの抱擁をたのしみましょう?」


もうやだこの母親。


こういう場面での言葉のキャッチボールが

成立しない。


なので、こういうときは...


「父さん、そろそろ時間じゃない?」


俺が父さんに声をかけると、父さんは

気付いたような表情をすると、母さんの肩に

手を置いた。


「そろそろ行こうか。 日が暮れてしまう」


「待って!! まだアルとの抱擁が

残ってるのよォォォォォォォォォォォォ!!

というかやっぱり連れて行きたいぃぃぃぃぃ!!」


子供のように駄々をこねる母親を見て、

俺の視線はもはや視線だけで人を凍らせられる

くらいに冷めきっていた。


だが、俺は自分の意志を母さんに

伝えるためにも、視線を真剣なモノにした。


「母さん、ごめん。 気持ちは嬉しいよ。

でも、俺は着いていけない。


もう、イルビアのように亡くなる人が

出ないように、俺は立派な農民にならきゃいけないんだ。


同じことを繰り返さないためにも...!」


俺の言葉を聞くと、母さんは目を細めた。


「義務じゃなくて、純粋な夢になればいいわね」


「え?」


「...縛られないようにしなさい、アル。

その気持ち呑まれたら、そのときは――




×○△(あまりにも)♪%☆(不適切な言葉)▼◎#(なので表現が)★□◇(できません)するわよ」


「精一杯農作業をやらせて頂きます!!」


「そう、ならいいわ」


母さんはニコッと笑うと


「頑張ってね、いつでも応援してるわ」


「俺も応援しているから頑張れよ、アル。

村長さんにもよろしくな」


「わかった!」


俺が了承するのを確認すると、二人は

村から去っていった。


「頑張らないと...」


一人固い意志をして、俺は村へと引き返した。

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