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彼女との出会い

今から17年前、俺はウェイン家の長男として

生まれた。


俺は両親に愛情を注がれてすくすくと

育っていった。


ある程度成長した頃から、俺は親に畑仕事を

教えられた。


「アル、肥料を蒔いたあとにこうやって

耕してあげることを田おこしって言うんだよ。

これをすることで畑の土さんは美味しい

お米を作ってくれるんだ」


「へぇー!」


そのときはまだ俺の家は米を専門に

育てていた。


俺を畑に連れて行く度に、父さんは鼻を

高くして俺に畑仕事について語っていた。


「田に水を引いたあとにこうやって土を平らに

することをしろかきと言うんだ」


「お父さん、その説明は前にも聞いたよ」


「ごめんなさい」


「水を引いた田で土下座しちゃ駄目だよ?

これじゃあ服がドロドロになっちゃう。


お母さんがまたカンカンに怒っちゃうかもよ?」


「はは、気にするなアル。きっと許して――」


「――あげるとでも?」


父さんの後ろには母が居た。

いや、あれを母と言ってよいのか。


憤怒に燃え、視線だけでも人を

殺せそうなその目と、恐ろしい笑顔で

父を見るその姿は修羅と言っても

過言ではなかった。


「...優しくしてくれよ?」


その言葉に母さんはニッコリと笑うと、

父さんの肩を手をポンと置き。


「――生憎、手加減は苦手なの」


それは実質、父さんへの死刑宣告であった。


「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」


幼い俺の心にトラウマが刻まれそうなったのは

言うまでもない。















それから月日は経ち、俺が5歳になった頃。


その日、俺達家族は米を納品するために

王都へ出掛けた。


最近、一部の地域が飢饉に陥ったらしく、

王都に売られている米は値上がりしており、

持ってきた米はいつもより高く売れた。


「なんだかいつもより野菜の値段が

高かったけど、どうして?」


俺がそう聞くと、父さんはドヤ顔になって、

自分を親指で指差しながら


「それはな? 父さんの類い稀なる貴重な

能力...交渉術のおかげだ」


「よくわからないけど凄いんだね!」


「おう、父ちゃんは凄いんだ! 褒め称え――」


何故か周囲の気温が下がった気がした。

冷気が広がっていくのがわかる。


その冷気の発生源は母さんだった。


母さんはその凍てつくような目線を父さんに

向け 


「...貴方? 貴方にはそんな力無いわよね?

ただ飢饉が起こったから高く売れただけよね?

それなのにそんな嘘をついてアルの信頼を

得ようだなんて羨ましゲフンゲフンとても

酷い行為だと思わないの?」


本能丸出しになりかけた母さんの言葉を

聞いた父さんは、俺にだけ聞こえる声

(で話そうとしたつもりだと思うけど、多分

母さんにも聞こえてた声)で、


「くっ...、アル、いいか?

今、目の前にはとてつもない恐怖が

迫っている。 だがな? 男はそんなことで

怯んじゃいけないんだ。 いかにも余裕が

あるような態度を取って相手を少しでも

欺かないといけないんだ。

本当にヤバくなったら頭を下げるなり

すればよいが、男がそう簡単には頭を

下げてはいけないんだ。


見てろよアル、これからお手本を見せてやる」


父さんは母さんに向け笑いかけると


「ははっ、ルシカ、本音が出て――」


「――潰すわよ?」


「ごめんなさい」


簡単に頭下げてんじゃねぇか。

3秒で土下座しやがったぞこの父親。


「というわけでな、アル?

この世界は理不尽に溢れているんだ」


地面と額をこんにちはさせながら

そんなこと言われても困る。


「...ん?」


ふと、前を見ると、目の前から少女が

歩いてくるのが見えた。


痩せ細ったその少女の足取りはフラフラで、

目は虚ろであり、今にも倒れそうだ。


倒れそうというか、今倒れた。


「ちょ...!」


俺は急いでその子の元へ駆け寄ると、

体を揺すった。


そして、とりあえずうつ伏せの状態から仰向けの

状態にさせた。


「ねぇ? 大丈夫!?」


「うう......、お腹...、減ったよぉ...」


体を揺さぶりながら声をかけたことが

効果があったのが、少女の要望が聞けた。


「母さん! 父さん! この子に何か

食べ物あげたいんだけど、いいよね!?」


俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて

クスリと笑った。


「...優しい子に育ったのね。

いいわ、適当に何か買ってきてあげる」


「母さん! ありがとう!」


俺は屋台へと向かっていった母の背中を

見たあと、少女へと視線を戻した。


「...これから僕のお母さんが食べ物を

買ってきてくれるからちょっと待っててね」


少女はその言葉に一瞬顔を輝かせたが、

すぐに元の表情に戻り


「食べ...物...? でも、知らない人から

食べ物は貰っちゃダメって...」


「じゃあこれから知り合いになれば

いいんだよ」


俺の言葉を聞いた少女は目を見開いた。


「...もしかして天才?」


「天才なんかじゃないよ。


僕の名前はアル・ウェイン。


君の名前は?」


「――イルビア・フェイク。


よろしくね、お兄ちゃん(・・・・・)


これが、イルビアと俺の最初の出会いだった。

久々に母親降臨したなぁ...。

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