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平和に隠れる闇

俺はルルグスの都市内を走っていた。

都市の外に出れば本気で走れるのだが、

ここで本気で走ると大変な事になるので、

歯痒い気持ちを押さえながらも走った。


「あった! 門だ!」


門番との手続きを終えて、少し都市から

離れたところで、俺は本気で走り始めた。


それほど目的地は遠くないようで、だんだんと

森が近づいてきた。


あれが幻影の森か...。


遠目でもわかるくらいの霧がかかっており、

油断したらすぐに迷いそうだと思った。


すでに夕日が見えてきたので、

早く見つけないと夜になってしまう。


...何事も無ければいいんだが...。


俺は幻影の森に入った。


森の中はさらに霧が濃く、10m先も見えないくらいだった。


「こんなんじゃ探すどころじゃないな...」


スキルに地形把握が無かったら帰れなく

なってたところだ。


しかし、帰れたとしてもルリを見つけられ

なければ意味がない。


...無駄かもしれないけど声出してみるか。


「おーい! ルリー! いるかー!?」




...ん?


何か向こうから声が聞こえたような...。


声が聞こえた方向に走りながら俺は

声を出し続けた。


「ルリ! どこだー!?」


段々と声が近くなっていく。


「ここだよー!」


「そっちか!」


声がすぐ近くから聞こえたのでそちらへ

向かうと、ルリは木に寄りかかって座っていた。


「はぁ...ようやく見つけた...。

何してんだよ...」


「あはは...僕、迷っちゃって...」


頬をかきながら面目無さそうにそう

言うルリに俺は手を伸ばした。


「まあ、とりあえず今日は帰ろうぜ。

俺は道がわかるからさ」


そう言うとルリは目を輝かせた。


「本当!? ...というか、何でアル君がここに?」


うぐっ、上手く誤魔化すか。


「ああ、それは――」


言いかけて、ゾワッと寒気がした。


周囲を確認すると、左の方に人型の影が見えた。


「ようやく見つけましたよ...。

いやぁ、誘い込んだは良いものの、

霧でまったく周囲が見えなくて探しづらかったですよ...。


さっきの声が無ければ森ごと破壊してたかも

しれませんね」


そう言いながらだんだんとこちらへ

近付いてくる。


この声、どっかで――


「この、声...まさか...」


ルリにもこの声に覚えがあるようだ。


そして、ようやく声の主が俺たちから姿が

見える位置に来た。


「おや、二人居るので誰かと思いましたが

もう一人は貴方でしたか。


いずれ貴方も処分する予定でしたので私としては手間が省けて嬉しい限りです」


その顔を見てルリは顔を強張らせた。


「やっぱり...。


君は...嘘の噂を僕に話した商人さんだよね...?」


ルリにとっては嘘の噂を聞かされた商人。


そして


俺にとっては邪龍について調べているときに

図書館への道を教えてくれた商人だった。


「それにしても、折角道を教えたというのに

私の話を聞かずにすぐに去ってしまうとは...

中々つれない人物だと思っていましたが...。


自らこの渦中に飛び込んでくるとは...!」


そう言って商人の彼は愉快そうに笑う。

邪龍も恐ろしかったが、コイツも同等、

下手したらそれ以上にヤバい。


俺はステータスを確認するために見極めの力を――


「...おや?」


彼は腕で何かを振り払うような動作をとった。


バチィンッ! という音が響き、見極めの力は

効力を発動しなかった。


「...は?」


見極めの力が...弾かれた?


「失礼、自己紹介がまだでしたね。

そんな探ろうとしなくてもちゃんと教えてあげますよ」


コイツは...意図的に弾いたってのか?


「私は邪神様の配下 ″ロキ・ダエーワ″

以後お見知りおきを」


そう言って恭しく貴族のように礼をするロキ。


顔を上げたとき、ロキの黒目は赤い目へと

変色していた。


「さて、ではどちらから――」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ルリが剣を構えてロキに飛びかかる。

その表情には焦燥が見てとれた。


「待てルリ! そいつは――」


ルリに制止を求め、手を伸ばすが遅かった。


「...ではお望み通り、貴女から始末して

差し上げましょう!」


一瞬、何が起きたのかわからなかった。


が、ルリが身体中から血を出して

吹き飛ばされたということだけは理解できた。


「ぐ、ぅ...」


吹き飛ばされたルリを見ていたロキは


「――脆い」


全てを凍らせるような冷たい声でそう呟いた。

うん、展開早いね。


どうにか出来ないかなこれ。

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