後日談
あのとき起こったことは村長だけに話し、村人は村長に誤魔化してもらった。
そのとき聞いたのだが、テスタは元々捨て子だったらしく、まだ赤ちゃんだったテスタが森に捨てられていたところをテスタの両親が拾ったそうだ。
恐らくテスタは俺に近づいても違和感を持たれないように、捨て子を装って村人に拾ってもらい、そのまま村人の一員になろうとしたのだろう。
そして作戦は見事成功し、彼らはテスタを拾い自分達の子供として育て始めた。
子供が出来ないことに悩んでいたらしい彼らは、自分達の子供となったテスタをとても可愛がり、深い愛情を注いでいったそうだ。
きっと、テスタが充実していたと言っていたのは、この二人によるものも大きいだろう。
彼らにだけは本当のことを伝えるべきか悩んだが、村長が『いずれ時期が来る。そのときにワシが説明しておこう』と言っていたので、俺はこの件に関しては村長に任せることにした。
また、イルビアが壊してしまった王都の復旧もかなり進んできており、元通りとまではいかないがそれに近いくらいには復旧が進んでいた。
ファルが誤解されていた件に関しては俺とイルビアが王様に謝罪したことで解決したが、問題なのはその後の俺とイルビアの処分で、俺は兄として責任を負うべきだと思っていたし、イルビアも重い罰を受けることを覚悟していた。
だが、イルビアは操られていて本人の意思で行ったわけではないということと、本人が深く反省していたこと。さらにファルの説得もあり、なんと俺たち二人ともほぼお咎めなしという結果に落ち着いた。
"ほぼ"というのは少し罰を受けたという意味だが、それは別に大した罰ではなく、イルビアにはアルビィではなくイルビアとして今まで通りメイドとして働くこと、俺にはファルの世話係として王宮で働くことが命じられた。
いや俺の罰だけおかしいだろ。なんだそれ。
そのあとすぐに、『冗談じゃ。君には一度娘を助けられているし、娘の恩人に何か罰を与えたりせんよ』と言って王様は笑ったが、目が笑ってなかった。引き入れる気満々じゃねぇか。
そのときファルも残念そうな表情をしていたが、俺はそれをスルーした。
それが終わってから数日経ったころ、俺とイルビアは母さんと父さんに会ってきた。
父さんは涙と鼻水が入り交じった顔でイルビアを抱き締めようとしたが、その瞬間母さんが父さんに向けて強烈なパンチをお見舞いした。
その後、母さんはイルビアを抱きしめながら『おかえりなさい』と耳元で優しく囁き、イルビアは泣きながら母さんを抱き締め『ただいま』と言っていた。
そのとき蚊帳の外になった父さんが泣きそうになっていたが、気にしたら負けだ。
しかし、イルビアが来たことだし、母さんから俺へ向けられる愛情も多少は少なくーー。
「アル! 貴方も後でたっぷり抱きしめてあげるからね! 今日はイルビアとアルと私の三人で寝ましょう!」
別にそんなことはなかった。親バカは健在だったし父さんも不憫すぎた。
そんなこんながあってあれから数ヶ月が経った今、俺は村人には秘密に作ったテスタの墓の前まで来ていた。
定期的にテスタの墓は俺が掃除しているのだが、今日がその掃除の日だった。
「よっ、また掃除兼お参りに来たぜ」
返事が来ないとわかっていながらも俺は墓へとそう語りかけると、布と水を使って墓を掃除し始めた。
「聞いてくれよ。最近何故か母さんの親バカ度が上がってきたんだ。今でもヤバイのにこれ以上上がったら抑えきれないってのにな……それからーー」
その後も俺は墓に語りかけながらも掃除をし、綺麗になったことを確認してから花を添えた。
「……うし、こんなもんかな」
俺は立ち上がると、墓から視線を外した。
「じゃあな。また来るぜ」
そう言って一歩踏み出した瞬間だった。
『おう。またな』
「……ッ!?」
思わず振り返ったが、そこには誰も居なかった。
「まさか、な……」
ただの幻聴だろう。そう判断して、俺は再び歩き始めた。
完結です!
色々ありましたがついにここまで持ってこれました!
これも応援してくださった読者様のおかげです!
ありがとうございました。
P.S:まだ作中で回収してないこともあるので、もしかしたら続きを書くかもしれませんが、現状は完結という形を取らせて頂きます。




