覚悟の帰還
「……見えてきた」
俺の眼前にはすぐそこにシルス村が見えていた。
いよいよだ。邪神はすぐそこに居る。
俺は後ろに居る三人の方へ振り返り、声をかけた。
「もしかしたらすぐに邪神との戦闘になるかもしれない。……準備はいいか?」
俺の言葉に三人はコクリと頷き、肯定の意を示してくれた。
「邪神がどんな奴なのかわからないけど、ちゃっちゃと倒して帰ろうよ!」
「そうね。私達ならきっとやれると思うわ」
「わ、私はあんまり戦えないけど……でも、頑張るから!」
三人の覚悟はすでに決まっているようなので、俺は問題ないと判断し、視線を前に向けた。
「……よし。それじゃ、行くぞ!」
いつ戦闘になっても良いよう、気を引き締めながら進んだ俺たちは、遂に村の内部に到着した。
注意深く周囲を見渡してみたものの、村の中に変化はなく、のどかでいつも通りの村が広がっていた。
「……本当に村の人たちには手を出していないみたいだな……」
それは喜ばしいことではあるんだが、そうすると邪神は一体どこにいるんだ?
村の人たちは何も知らなさそうだし、どうするべきか……。
悩んでいると、ルリが声をかけてきた。
「ねぇアル。邪神はまだ姿を現さないし、今のうちに村の人たちをここから遠ざけた方がいいんじゃないかな?」
「……そうだな。ちょっと村長のとこに行って説明してくる。村の人全員に伝えるよりこっちの方が良いだろうからな」
「わかった。僕たちは何か起こっても良いように見張っておくね」
「頼んだ。ちなみに村長の家はあそこだから、もし何かあったらすぐにあそこに来て知らせてくれ」
「うん。わかった」
俺はルリたちにこの場を一旦任せ、村長のもとへと向かった。
「……なるほどのぅ」
俺は村長に現状を出来るだけ簡潔に伝えると、村長は顔をしかめながら口を開いた。
「つまり、今現在この村には邪神が居座っていて、お前はその邪神に半ば脅迫されたような形で呼ばれた……。ここまでは良いか?」
村長の言葉に、俺はコクリと頷く。
「そしてもしこの村で邪神と戦うことになれば村人にも危険が及ぶから、なんとかこの村から村人を遠ざけて欲しい……そういうことじゃな?」
「ああ。それで合ってる」
俺の返答に村長は溜め息をついた。
そりゃあいきなりこんなことを言われたら驚くだろうし、そもそも信じられないだろう。と、思っていたのだが……。
「はぁ……。また面倒なことになったのう」
「……信じてくれるのか?」
「お前がこんな嘘をつくとは思えんからのう。……しかし、村人全員をここから遠ざけたいとなると、中々難しいかもしれんわい」
「難しい? どうしてだ?」
「いきなり邪神が村に居るから避難してくれなんて言っても、信じる者は少ないじゃろうて。居たとしても混乱しそうじゃがな」
「……つまり、どうにか別の理由で村の人たちをここから遠ざける必要があるってことか……?」
「そういうことじゃ」
確かにそれは難しいな……。
「それと、ワシからひとつ聞きたいことがあるんじゃが、そもそもどうしてお前が村に着いた時点で邪神は姿を現さないんじゃ? まさかお前が村に着いたことをわかっていないわけではあるまい」
「それは俺も不思議に思ってる。俺もてっきり村に着いたらすぐに邪神が出てくると思ってたからな」
でも実際は何も起こらなかったし、特に変わった様子はない。
「……とりあえず本来ここには居ない危険な魔物が周辺の森に居るという体で避難はさせておこう。お前たちはギルドから依頼を受け、その討伐のために来たということで話を合わせてほしい」
「わかった」
「よし。ではワシは早速村人に伝えてくるから。お前も仲間のところに戻ると良い」
そう言って、村長は外へと出ていった。




