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故郷への道のり

 シルス村へと出発した俺たちだったが、村に邪神が居るとはいえ特に特別なことはせず、会話しながら歩いていた。


「そういえば、どうして邪神はわざわざアル君の故郷に居るんだろう?」


 ファルの質問に、俺は溜め息をつきながら口を開いた。


「村の人たちを人質に取ることで、確実に俺が村に来るようにしたかったんだろうな」


 俺がそう言うと、ルリは不思議そうな表情をして、


「ん……? でもそこまでアルと会いたいんだったら、自分から僕たちのところに来るんじゃないかな?」


「そうなんだよな……」


 村の人を人質に取ったようなものとはいえ、人によっては村には行かずにそこまま逃げるという可能性もある。


 ならルリの言う通り、邪神の方から俺たちのところに来るのが一番確実だろう。


「でも、私たちからすれば心の準備をしてから臨めるわけだし、いきなり向こうから来られるのに比べればマシと言えるかもしれないわね……」


「そうですね。でも……どこか怪しい気がします」


 ヘレンさんが言ったように、今回のことはこちらにも万全の準備をしてから邪神と会えるというメリットがある。


 だが、邪神はそんなことくらい当然わかっているはずだ。


 何かを企んでいるのか? でも、村に居座ったところで向こうにメリットなんてーー。


「あっ!!」


 ルリは突然ハッとしたような表情になって声をあげた。


「まさか、戦いに村の人たちを巻き込むつもりじゃ……」


「……どういうことだ?」


「もし……いや、邪神とは絶対に戦うことになると思うんだけど、そのとき、戦場になるのはーー村、だよね? そしたら当然村の人たちも……」


「……なるほどな」


 邪神ともなれば今までの幹部とは比べ物にならない力を有しているはずだし、どんな攻撃をしてくるのかは未知数だ。


 村の人には手を出さないと言っていたらしいが、そんな力を村で振るわれれば、何の関係のない村の人も邪神の攻撃に巻き込まれる可能性が高い。


 邪神なんてただ相手にするのですら手一杯なのに、さらに村の人たちを守りながら戦うことになんてなれば……勝てるわけがない。


「村についたらまずは村の人を避難させるのを優先した方が良さそうだな」


「うん。それがいいんじゃないかな。邪神の目的が村の人の巻き添えっていう保証はないけど、それでも対策しておくに越したことはないだろうし」

 

「ああ」


 この程度でどうにかなるなんて思ってはいない。けど、気休めとしては十分だ。


 だが、ふとルリの表情を見ると、どこか憂いのある顔に見えた。


「……どうした?」


「えっと、別に今言うようなことじゃないし、大丈夫だよ」


「いや、教えてくれ。何か気がかりなことがあったら邪神と戦うときに支障が出るかもしれないし」


「……そっか。じゃあ聞くね」


「おう」


 しかし、ルリが気になっているなんて一体どういうーー。


「アルが寝てた布団に枕が2つあったんだけど、まさか昨日は二人で一緒に寝たなんて言わないよね?」


 気になってたことが予想の斜め上すぎた。


「おい待ってくれそれは今掘り返すことじゃない」


「アル君、どういうこと?」


「待って、本当に待って」


 全部終わったあとじゃなかったのかよ!? 仮にも邪神のところに向かってる途中だぞ!?


「なあ、ファルも何とか言ってくーー」


 助けを求めるようにファルへと視線を向けると、ファルは顔を赤らめてそっぽを向いていた。


 …………えぇ。


 その反応を見たヘレンさんとルリは、俺の肩にポンと手を置いてきた。


「どういうことなのか」


「詳しく説明してもらえるかな?」


「あー、えっと、だな。こ、これは全部終わってからまた話すってことになってるから、今はーー」


「アルは今で良いって言ってくれたよね?」


「…………えぇ」 


 おかしいなぁ……。今、そういう雰囲気じゃなかっただろ……。


 俺、邪神のところにたどり着く前に死ぬかもしれない……。


 今は邪神よりも、後ろの二人が怖いと思った。

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