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返事

「なあリネア」


 少し遅めな昼食を食べ終わったあと、俺はリネアに問いかけた。


「なんですか?」


「手紙の返事っていつ頃返ってくるんだ?」


「……わからないです。そもそもこの街の状況からして、領主様も変になってしまっているのであれば、返ってこない可能性もあります」


「だよなぁ……」


 でも、そうなると色々と困るんだよなぁ……。


「気長に待ちましょう。返事が来なければそのときはそのときで、別の方法を模索すれば良いと思います」


「そうだな」


 とりあえず話が一段落ついたところで、玄関をノックする音が聞こえた。


 それに気付き、俺とリネアの表情が強張った。


「なあリネア。今店って閉めてるんだよな?」


「はい。だから来客なんて有り得ないんですが……」


「わかった。じゃあもしも何かあったときのためにも俺が出る。それでいいか?」


「……すみません。お願いします」


 不安げにリネアがそう言うので、俺はリネアを励まそうと少し声を大きくして、


「大丈夫だって! 何ともないと思うぞ! 多分、きっと、おそらく……」


「段々不安になるフレーズにしていくのやめてください」


「ごめん」


 正直俺もちょっと怖い。あの街の状況を見たあとだし、何をされるかわかったもんじゃない。


 俺達がまごついている間にも、ノックが激しくなっている。


 かノックに合わせて鼻歌まで聞こえてきたぞオイ。絶対ビート刻んでるだろこれ。怖すぎるんだが。


「……これ以上激しくなる前に行ってくるわ……」


「お、お願いします……」


 恐る恐るといった様子でリネアが見守ってくれている中、俺はドアノブに手を伸ばした。


 大丈夫。何があったとしても冷静に、落ち着いて対処しよう。


 意を決して扉を開けると、目の前には好青年が立っており、


「お届けものです!!」


 と大声で叫んだあとに、スパァン!と俺の顔面に封筒を叩きつけてきた。


 何が起こったのかわからずに呆然としている俺の目の前で封筒は床へ落下し、来客はそのまま去って行った。


「…………………………」


 俺は無言で扉を閉めて鍵をかけると、かがみこんで封筒を取り、見守っていたリネアに声をかけた。


「……この街の人は叩きつけるのが好きなんだな?」


「違います誤解です」


 キッパリとリネアに否定されたが、俺は気にすることなく封筒に書かれている宛先を見た。


「レムル・ホルーン……? これってまさか……」


「領主様からですか!?」


 珍しく驚いた様子を見せたリネアに封筒を渡すと、リネアは震えながら封筒を受け取った。


 封を開けて中の文章を読み、リネアはゆっくりと顔を上げた。


「確かに領主様からのお手紙です……。でも、流石にお返事が届くのが早すぎます……」


「だよな……」


 やっぱり怪しい。これはかなり用心しておいた方が良いかもしれない。


「それで、手紙にはなんて書いてあったんだ?」


「『明日、昼頃に来て欲しい。共にランチでもしながら話し合いましょう』と、書いてありました」


「いきなり明日かよ……」


 しかしランチか。……なんか、毒でも盛られそうな気がしてきたな……。


 ま、このチャンスを逃すつもりはないし、行くしかないんだけどさ。


 ……色々と準備しとかないとな。


「リネア。ちょっと出掛けてくる」


「? どこに行くんですか?」


「調査だよ。明日領主に会えることになったとはいえ、もしも領主が黒幕じゃなかったらまた振り出しに戻るだろ? だから、そのときのために少しでも情報を集めておこうかなって」


「そうですか……。わかりました。遅くなりすぎないようにしてくださいね」


「わかった」


 咄嗟に考えた苦し紛れの言い訳だったけど、何とか誤魔化せたみたいだな。


 万が一ってこともあるし、これはリネアに知られるわけにはいかない。


「じゃあ、行ってくるよ」


 そう言って、俺は持ってきたローブを被って外出した。


「お気をつけて」


 申し訳なさそうな、元気の無いリネアの声が俺の耳に届いた。

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