街調査
家の場所もわかったことなので、俺はリネアに許可を取って、一人で街の中の調査を始めた。
無論危なくなればすぐに帰るつもりではあるし、リネアもそれは了承済みだ。
普通の魔物なら襲ってきても倒してしまえば良いのだが、今回襲ってくる可能性があるのは、街に住んでいる善良な市民達だ。
そのため反撃することは出来ず、俺には逃げることしか出来ないのが非常に厄介だが、そこはどうにか上手くやるしかない。
とりあえず、街の人たちが何かして来ない事を祈りながら、街中を巡ってみることにした。
商店街、人通りの少なそうな場所、街の出入口、その他の様々な場所を回り、何か変わったことが無いか調べて見たが、特にそういったものは見られなかった。
少しは何かわかるかもしれないって思ったんだけど、そう簡単にはいかないか。
俺は最後に街の中央にある広場まで来ると、そこに建てられている石像の近くのベンチに座り、諦めたようにうなだれた。
ここも特に変わったこと無しか……いや、わかってはいたんだけどさ……。
疲れだけしか得られなかったことに俺は落胆したが、ここで諦めていては依頼の解決など出来ない。俺は気を取り直し、次の方針を考えることにした。
見落としがあるかもしれないので、もう一度街を見て回る……という手もあるが、やっぱり、こうやって街を調査するよりも、ここの領主と直接話をしてみたい。
リネアから聞いた限りでは、ここの領主がダントツで怪しい……というか領主以外に怪しいやつが居ないだけではあるが、狂うことを無効化させるお守りを作ることの出来るリネアの両親をピンポイントで連行したということで考えると、領主はかなり怪しい人物になる。
でも、面会なんて出来るわけないしな……。いや、この狂った状況ならもしかしたら出来るかもしれないけど……。
……ダメ元で領主と会う方法をリネアに聞いてみるか。
そうと決まると、俺はベンチから立ち上がり、リネアの家へ戻り始めた。
大丈夫だとは思うが一応用心するということで、出来るだけ人が見ていないうちに家の前にある階段を降りて、急いでお守り屋の扉を開けた。
「戻ってきたんですね。どうでした? 何か収穫はありました?」
「収穫は何も無かったんだが……その、ひとつ聞きたいことが」
「何ですか?」
俺は先ほど思ったことをリネアに伝え、領主に会うことが出来るかどうか聞いてみた。
俺の話を聞き終わるやいなや、リネアは呆れたような表情になり、
「無理です」
ですよね。知ってた。やっぱ無理だったか……。
「無理……ですが、この緊急事態ですし、上手い具合に話を進めれば……お話することも、出来るかもしれません……」
リネアはうつむきながらそう言った。
「……え? 領主に会えるのか?」
「絶対にという訳ではありませんが、やりようによっては……お会い出来るかもしれません。よければ私が交渉してみますが……」
「頼む。街を回るだけじゃわからないから、どうしても領主に話を聞きたいんだ」
「……わかり、ました……」
そう返してくれたリネアには、どこか元気がなかった。
この街に戻ってきて再び惨状を目にしたことから疲れているのだろうか。
「リネア、無理そうなら別にやらなくても……」
「いいえ。やります。やらなきゃ……いけないんです……」
「そこまで責任を感じなくても……」
とはいえ、これ以上リネアを説得しても恐らく彼女は止まらないので、俺はリネアに一言頑張れよと告げ、適当な椅子に腰を掛けた。
すると街を回った疲れからか、眠気が俺の元にやってきた。作業してくれているリネアのためにも寝るわけにはいかないと耐えていたが、やがて俺は眠気に負けて夢の世界に旅立ってしまった。
「……め……なさ……」
だがら、俺はこのときのリネアの小さな小さな言葉を聞くことが出来なかった。




