家到着
俺はリネアに案内されるがままに進んでいき、一軒の店の前に到着すると、リネアは足を止めた。
「着きました。ここが私の家です」
「……なあリネア。リネアの家ってお守り屋さんなんだよな?」
「そうですが?」
そうだよな。うん。リネアの家はお守り屋さんだったよな。でも……。
「ここ、武器屋にしか見えないんだが……」
お守りという有り難みのあるものとはかけ離れた物騒な店に辿り着いたんだがこれはどういうことだ?
俺が疑問に思っていると、リネアは呆れた様子でこちらに視線を向け、
「いえ、私の家はその武器屋ではなく……」
と言いながら、リネアはその武器屋の隣にある、人が1人通れるくらいの路地のようなところを指差した。
「あそこです」
「そっち!?」
ってか狭くないかアレ? もしかして、あんな隙間に店を作ったってのか……?
「では今からあそこに行きますから、転ばないように気をつけてくださいね」
「……転ぶ?」
リネアの言葉を不思議に思った俺だったが、その路地の目の前まで来てようやくリネアの言葉の意味がわかった。
ここには路地ではなく下り階段があり、そして、その階段の先にはお守り屋と書かれた看板がたてつけられた扉があった。
「こんなところに店が……」
俺が唖然としている間にも、リネアは扉の鍵を空けており、早く来いと言わんばかりに俺を手招きをしていた。
「悪い、今行く」
階段を駆け降りて扉の中に入ると、普通の店より少し広めな空間が広がっていた。
「お邪魔します。……おっ、中は意外と広いんだな」
「地下に店を建てるとこういう利点があるんですよ。地上よりも家や店を建てたい人が少ないので、その分安く、広く使うことが出来るので」
「へぇ……。でも、こんなところに店があったら客が気付きにくいんじゃないのか?」
「それについては問題ありません。普段はあの階段の前に『この階段下にお守り屋有り』と記した看板を設置していますから」
やっぱ、そういうところは工夫してるんだな。
「……ん? そういえば、今来たときは看板が置いてなかったような……」
「街がこんな状態の時にお客さんなんて招けませんよ」
「あっ、はい」
ごもっともだわ。うん。
「……ところで、リネアの両親はどこに居るんだ? 確か、まだ狂っていないって言ってたけど……」
俺がそう聞くと、リネアは表情を暗くしてうつむいた。
……あれ? もしかして、聞いたら不味いことだったか……?
「あー。えっと、無理に言わなくても大丈――」
「……わかりません」
「へ?」
「まだこの街に変化が起こり始めた頃……と言っても、もう既に街の人たちの大半が狂ってしまっていましたが、そんなときにレムル様が護衛の人たちと共にこの店を訪れて、母と父を連れていってしまいました。それきり、二人には会っていません」
連れていった……か。どう考えてもそのレムルってやつが怪しいと思うが……。
「なあ、レムル様って……何者なんだ?」
「レムル・ホルーン様は、このガル街の領主様です」
「領主!?」
驚いてつい大きな声を出してしまった。
なんせ、もしもこの街の変化の原因がそのレムルってやつにあるとすれば、レムルは自分の街を滅茶苦茶にしようとしているってことになる。
何故そんなことをする必要があるんだ? デメリットしかないはずだが……。
「多分レムル様も狂ってしまっていて、それで無差別に誰かを連れ去っているんだと思うんですが……」
確かにその可能性もある。だが、この目立たない場所にある店にわざわざやってきたということは、リネアの両親を最初からピンポイントで狙っていたという可能性もある。
「……わからないことを考えても仕方ないか。とにかく今は、この街がこうなった原因を早く解明しないとな」
「はい。私も何か出来ることがあればお手伝いしますので、遠慮なく言ってください」
そう言ってくれたリネアの表情は、どこか憂いを感じるものとなっていた。
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