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逃走成功

「お客さん! 中継地点に着いたよ!」


「……ん?」


 どうやらオークへの恐怖のあまり、いつの間にか気を失っていたようで、操縦者さんの声で俺はパチリと目を覚ました。


 この様子だと、どうやら逃げ切れたようだ。


 しかし、頭の下がどこか柔らかいような――。


「目が覚めたなら早く起き上がってください」


「え?」


 どうやら俺はリネアに膝枕されていたようで、それに気付いた瞬間、ガバッと起き上がった。


「ちょ!? なんで膝枕!? ごめんなさい!!」


「どうして起きて早々謝るんですかアルさんは……」


「いや、てっきり通報されるのかと……」


「私が自分でやった行為なのに訴えるわけがありません。それとも、膝枕されたと気付いたときにやましいことでも考えていたんですか?」


「め、滅相もないです!!」


「なら早く降りましょう。長々と操縦者さんを待たせてしまうのは申し訳ないですし」


 そう言って降りていくリネアに続いて、俺は馬車を降りた。


「お客さん、今日はあそこの小屋で休息を取ってくれ。明日出発するときには声をかけるからさ」


「わかりました。ありがとうございます。リネア、あそこの小屋に――」


 リネアに操縦者さんから聞いたことを伝えようとしたが、リネアはすでに小屋に向かっていた。


「……早くね?」


「お嬢さんにはここに着く前に伝えておいたからね」


「あっ、なるほど……」


 どうりですぐに小屋に向かったわけだ……。


「しかし、良い子だな。あのお嬢さん」


「良い子?」


「ああ。お客さん、過去にオークと何があったか知らんが、相当うなされてたんだよ」


「へ、へぇ……。そ、そうなんですか……」


 未だにトラウマだからな。早く克服しないと……。


「でも、あのお嬢さんがうなされてたお客さんを膝に招いて、頭を撫でながら『大丈夫、大丈夫』って感じにずっと声をかけてたんだ」


「……え?」


 嘘だろ? リネアが? 何で?


「お客さんが目を覚ましたときだって、安心したように笑ってたんだ。なんだかたくさん罵倒されてるみたいだけど、お嬢さんはお客さんの事を大切だと思ってるみたいだぜ」


「は、はぁ……」


 あの罵倒のされかたからして、大切に思われているとは到底思えないが……。


「ま、これからもお客さんはあのお嬢さんを大事にしてやってくれ」


 大事にしてやってくれ……か。そんなこと言われても、依頼が終わったらあまり会うこともないだろうから、俺にそれを言われてもな……。


「ぜ、善処します」


「ああ。それじゃ、また明日」


 そう言って、操縦者さんが別の小屋の方へと歩いていったのを見た後、俺は王都の方角へと視線を向けた。


「……ちゃんと動いてくれてるのか……?」


 正直、今回の依頼は俺一人では完遂できる気がしない。


 だからこそ協力を扇いだのだが、果たして動いてくれるかどうか不安だ。


 ……なんて、考えるだけ無駄か。きっと、なるようになるはずだ。


「…………さて、俺も小屋に行くか」


 これ以上外に居てもする事はないし、何よりまたリネアに罵倒されてしまうだろう。


 あと少しでガル街に着く。ガル街に着いてしまえば満足な休憩は出来ないかもしれない。


 だから、今日はここでしっかり疲れをとっておこう。


 そう考えながら、俺は小屋へと向かった。もちろん、リネアにまた罵倒されたのは言うまでもない。

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