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知らせ

「……ようやく着いたか」


 オークに遭遇したくなかったので森を通らずに遠回りしたところ、かなり時間を取られてしまい、王都に着いた頃にはすっかり夕方になってしまっていた。


 本当は元の道を通りたいところだが、オークと素手で格闘とか嫌だし、アイツらに触れるのは生理的に無理だ。


 だが、流石に時間を取られすぎるし、ツタを完全に使いこなせるようになったら元の道を通るようにしよう。安全な距離から触れずに倒せるというのであればあまり怖くはない。


 それに、邪神陣営との戦いに備えて早く使いこなせるようにならないし、頑張らなくちゃな。


「あっ! やっと見つけた!」


 一際大きな声が聞こえたので、その声の発信源に目を向けると、ファルがこちらに向かって走ってきていた。


 ファルは俺の目の前まで来ると、膝に手を置いて肩で息をし始めた。


「ど、どうした?」


「じ、実は……知らせたい……ことが……」


 ファルが息を切らしながらそう言うので、何かあったのかと内心不安になりながらもファルに尋ねた。


「し、知らせたいこと? ってかなんでそんなに疲れてるんだよ……」


「……もうすぐ、帰らなくちゃ……いけない時間だったから……走り回って探してたの……」


「そ、それは悪かったな……ごめん」


「いいの。気にしないで」


 ようやく息が整ってきたのか、ファルは体勢を元に戻し、俺の目を見て話し始めた。


「えっと、騎士団がシルス村に行くって話あったでしょ?」


「そういえばそんな話も――って!? まさか!?」


 俺の正体がついにバレたのか……? 


「……さようなら、俺の農民人生――」


 俺が真っ白に燃えつきたかのようにそう言うと、ファルは俺の発言の意図を理解したのか口に手を当て、


「え? あっ! 違うよ! アル君の正体はバレてないの!!」


 ……………………え? 


「…………そうなのか?」


「うん。今回はそれとは別件の話なの」


 なんだ別件か。騎士団がシルス村に行ったって話だったからてっきり俺の正体がバレたのかと思った。


 でも、バレてないなら一体他に何が……?


「そっか。で、その別件の話って?」


「それなんだけど……シルス村がちょっとおかしいらしくて……」


「おかしい?」


「そう。詳しくはわからないけど、シルス村には何かが居るって……」


 ……シルス村に、何かが居る……? 


「……どういうことだ?」


「シルス村に向かった騎士団の隊長さんが言うには、同行した神官さんがシルス村に近づくにつれ気分が悪くなって、シルス村に着いた頃には意識を失っていたみたいで……」


「神官が……?」


 神官といえば、神をまつる人たちのことで、政治活動をしている人もいれば裁判長を勤めている人や教会の神父をやっている人もいて、聞いた話によると神の声を聞ける人もいるって話だよな……。


「……倒れたのは神官の人だけだったのか?」


「うーん……。多分そうだと思うけど……」


 どうして神官が同行したのかはわからないけど、神官だけが倒れたってことは何か理由がありそうだが……。


 ……一度見に行ってみる必要があるかもな……。


 でも、様子を見に行って、居るかもしれない何かを刺激してしまったらシルス村の皆が危ない目にあうかもしれない。


 行くとしたら、そのときは慎重に行動する必要があるな。


「……わかった。知らせてくれてありがとな。よし、そろそろ暗くなるから帰ろう。ファルも護衛の人と早く…………あれ?」


 見渡してみたが、ファルの護衛らしき人が見つからない。流石に王女の立場のファルがこの時間に一人でこんなとこに居るわけないよな……? 


「えっと、ファル? 護衛の人は……?」


「えっと……アル君にこれを早く知らせなきゃって思って……何も言わずに飛び出してきちゃった!」


「アホか」


 単身で飛び出して来たのかよ。いや、知らせたいって気持ちはありがたかったけどさ……。


「……暗くなるまで俺が見つからなかったらどうするつもりだったんだよ……」


「そのときは暗くなる前に帰ってたよ? …………多分」


「多分かよ」


 仕方ない……まだ完全に暗くなったわけではないけど、夜は近いしな……。世の中何が起こるかわからないし……。


「近くまで送るから早く行くぞ。このままじゃ夜になるし」


「……うん! ありがとっ!」


 夕焼けのせいか、そのときのファルの顔は少し赤く見えた。

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