情報収集
ある日、俺は適当に魔物討伐依頼を受け、王都付近の森に来ていた。
討伐対象である魔物を着実に倒していったのだが、俺の気分は晴れなかった。
「……はぁ、違うんだよなぁ……」
俺はただ魔物を討伐しに来ただけではなく、力の扱いを完璧にするための練習も兼ねていた。
だが、思うように力が扱えなかった俺は頭を抱えていた。
「うーん……。なんとかあのツタを出せるようにはしておきたいんだが……」
あの金のツタは非常に強力で、あれがあるだけでも俺はかなり戦えるようになる。
しかし、今まであのツタを使えたのは特定の場面だけであり、普段は自由に出すことが出来なかった。
もしかして、何か条件でもあるんじゃないか?
そう思って、まずはステータスウィンドウを開いて確認してみたが、特に記述はなかった。
……まあ、そう簡単にわかるわけないよな……。なら、条件を調べるしかないか。
まず、今まで使えたときの状況を思い出してみよう。
初めて使えたのは、魔族領で善神にこの力を渡されたとき。次に使えたのは、捕まっている母さんたちを助けるために墓場に行って、オシリスと戦ったときだ。
この2つの場面に共通していることは……。
「…………………………もしかして、ピンチになると使えるとか……なのか?」
いや、でもそれなら変態一つ目野郎や、合成魔獣と対峙したときにも使えたはずだ。いや、でもピンチの度合いによるとか……?
……何にせよ、ピンチだと使えるという可能性は低そうだ。
「となると、他に類似点は……」
そういえばどっちの場合も邪神の幹部と戦ってたっけ……でも、それが条件だと合成魔獣のときにも出るはずだ。
なら場所か? あのときの魔族領と、あの墓場はちょっとおっかないところだったし、何か繋がりがあったりして……。
「……な訳無いよなぁ……。場所によっては発動しないなんてスキルを善神が授けるとは思えないし……」
駄目だ。まったくわからん。こうなったら誰かに聞いてみるのも有りかもしれないな。
身体の一部を龍に変えることが出来るヘレンさんなら、扱う力の方向性は違えど、何かツタに通じるものがあるかもしれない。ちょっと聞いてみるか。
「そうと決まれば、さっさと依頼を片付けるか」
ようやく依頼が全て済ませた俺は、ギルドへと戻ってきて、カウンターに居るヘレンさんの方へと向かった。
「アル君、依頼はどうだった?」
「ばっちりです」
そう言って俺が討伐したという証拠になる部位をカウンターに置くと、ヘレンさんはそれを手早く確認した。
「うん。これなら大丈夫。今日もお疲れ様」
「ありがとうございます」
労いの言葉をかけながら報酬を渡してきてくれたヘレンさんから報酬を受け取った後、俺は本題に入った。
「ヘレンさん、ちょっと聞きたいことがあるんですが良いですか?」
「へ? 聞きたいこと? 別に構わないけど、どうしたの?」
俺の言葉に、ヘレンさんは目を丸くしながら首を傾げた。
「その、ヘレンさんって身体の一部を龍化させられますよね? それってどうやってやってるんですか?」
「どうって言われても……。こう……力を変化させたい部位に集中させて……」
ヘレンさんは言いながら人指し指をピンと立てると、何やら力をこめ始め、
「えいっ」
ポンッとヘレンさんの人指し指が龍のモノへと変化した。
「…………なるほど」
さっぱりわからん。でも、力を入れたい部位に力を集中させるってのは何かのヒントになるかもしれないな。
俺が考えている間に、ヘレンさんは誰かに見られる前に指を元に戻し、俺の方を見た。
「えと……役に立てた……かな?」
「はい。とても参考になりました」
「ほんと? 良かった……!」
ヘレンさんはパァッと明るい笑顔になり、とても喜んでいるように見えた。
もしかして、ヘレンさんは人に尽くすのが好きなのか……? いや、今はそんなことを考えている暇はないな。
「助かりました。ヘレンさん、ありがとうございます。もしかしたらどうにかなるかもです」
「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいな」
よし、ヘレンさんからヒントをもらえたわけだし、ちょっと王都の外に出て力の入れ方に工夫して練習してみるか。
「では、そろそろ行きますね。お先に失礼します」
「うん。またね」
手を振って見送ってくれたヘレンさんに、俺もまた手を振って答えたのだった。




