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【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

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ラウレータの世界 ③

 新しいお母様の話をされることも面倒で、そういう人が来ても嫌な思いをするだけだった。

 それにお父様も新しいお母様候補としてやってくる人たちに特別な感情などは感じていないようだった。……お父様って、多分、女の人にあんまり興味がないのだと思う。

 新しいお母様候補の人たちの中には、綺麗な人も多かった。でもどうでもよさそうだったから。




 私は新しいお母様候補と会うことで、今まで分かってなかったことも知ることが出来た。




 私のお母様が、びっくりするぐらい綺麗だったってこと。

 元々からお母様のことを、凄く綺麗だなと思っていた。銀色の長い髪がキラキラしていて、お姫様みたいだなと思っていた。本当に、誰よりもお母様は綺麗な人だったんだなって他の人たちと会って改めて思った。




 お父様も、キラキラしていてかっこいい。



 私はその二人の子供だから、周りから見て可愛いとか、綺麗だとか言われる見た目をしているらしい。そう言われるのは素直に嬉しいけれど、何か企んだような目を向けられたりするのは……ちょっと嫌だなとは思った。

 お母様に会いたいと、ずっと思っている。お母様が居てくれたら、きっともっと幸せな気持ちになるだろうなとそう思う。



 だけど、その気持ちを口にしても、もっと新しいお母様候補という人がやってくるだけだってのは分かったから。




 私が何を考えているかなんて、周りは知らない。




 ただ私がお母様のことを口にしなくなったことを、お母様のことを私が忘れたと勘違いしているみたい。そんなことはないのに。

 大好きなお母様のことを私が忘れることなんてありえない。

 そういう私の大事な気持ちは、私が大切に心にしまっているものだ。




 そうやって過ごしている間に、お父様は恋をしたらしい。お父様が貴族の女性を気にかけているのを周りの人たちは喜んでいる様子だった。




 ……あまり女性に関心を持たないお父様が、誰かを気にかけているのならば……きっとお父様はその人を私の新しいお母様にしようとするだろう。

 お父様はきっと、その人のことを好きになったのならば結婚したいと思うだろうな。

 お父様がその人のことを本当に好きで、大切に思うのならば私は受け入れようとは思っている。……だってお母様とまた結婚するようなことはないだろうから。それならお父様の好きな人がよっぽど嫌な人じゃなければいいかなって思った。




 その人が私と仲良くしてくれるかは分からないし、お母様のことをどういう風に思っているかも知らない。






 私は最近、家庭教師が出来たけれど……、やっぱりお母様の方が教えるのが上手だったなと思う。そのとても素晴らしいと言われている教師の人よりもお母様の方が色んなことを知っている。

 それに教師の人たちって、一つのことを知っているだけなのだ。




 歴史の先生だったら、歴史を知っているだけ。

 魔術の先生だったら、魔術を知っているだけ。

 礼儀作法の先生だったら、礼儀作法を知っているだけ。




 お母様は、本当に色んなことを知っていた。

 お母様は「実際に行ったことはないけれど」「実際にやったことはないけれど」とそう口にしながらも、教えてくれた。




 沢山のことを知っていたお母様は、あまり多くのことは経験したことがないと言っていた。でもやったことのないことも、お母様は知っていた。




 こうやって教師から沢山のことを教わっていると、余計にお母様の凄さを私は実感する。




 本当にどうして誰もお母様の凄さを知らないんだろう? 誰もお母様と話してなかったから?

 お母様のことを分かり合えるほどに、誰も見ていなかったのかな……。

 私はそんなことを考える。





 そういう風に、誰もお母様のことを正しく分かってないのっておかしいなと思う。なんだか変な感じがする。どうしてそんな風な状況になっているのだろう……?




 私は大人になったら、お母様に会いに行きたい。そしてお母様がどれだけ凄い人か、誰かに広められたらいいなとそう思っている。

 だってお母様がそんな風に嫌な人だって思われたままは嫌だから。

 私がもっと大人になって、皆に言葉が届くぐらいの存在になったら……お母様がどういう人かちゃんと広められるようになれるかな?

 そんなことばかりを私は考えている。




 私の頭の中は、お母様のことばかりだ。

 きっと、誰も私がお母様のことばかり考えていることを知らないだろう。




 ――お父様の気になっているという女の人に会ったけれど、その人も当然、私がお母様を大切に思っている気持ちは分かってくれていない。



「ラウレータちゃん、私と仲良くしてくれると嬉しいな」




 そう言って穏やかな笑みを浮かべるその人は、私に対する哀れみのようなものがその瞳から窺えた。



 お母様が私の母親であることは、私にとって自慢だ。

 だけど、お母様のことを嫌な風に言う人やこうやって私のことを可哀想っていう目を向ける人ばかりな気がする。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ラウレータの、母親以外のボンクラ達に対する淡々とした語り具合が、「好きの反対は無関心」て感じで良いですね。 [気になる点] コレは独り言ですが。 「ラウレータの世界」は、ラウレータの回想で…
[一言] 真っ直ぐな儘で育った事が不思議な位だけど、それだけ母子の触れ合いが彼女には宝だったのでしょうね…
[一言]  むしろ、仲良くする気ない態度。
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