ラウレータの小さな冒険 ⑨
『なんでって……俺は長男だし、周りの大人の言うことはちゃんと聞かなきゃならない』
レオジミーは何を当たり前のことを聞かれているのだろうといった態度でそう言い切る。
長男だから、何ていってそんなことを言うのは何とも言えない気持ちになってしまった。確かに生まれる家によっては、自分の意思で何かを決めたりすることは出来なかったりすると聞く。
そもそも私もロージュン国に居た頃は、言われるがままに行動をしていることが多かった。私自身はお母様のことを悪く言う言葉を否定したかったし、そんなことは言わないでほしいとそういう気持ちでいっぱいだった。それでも……言っても仕方がないと分かっていたから私は口にすることが出来なかった。
だって皆、お母様のような母親は忘れるべきだって言っていたから。だけどこのスラファー国にやってきてからはそういうこと全然ないな。
お母様もディオ父様も、私にどうあるべきかなんて求めない。寧ろ他の周りの人は私にこうあってほしいとか、もっとこうしてほしいとかそういうことを言ってくる人はいるけれど……。
『そうなの? 私はレオジミーの家、知らない』
私もレオジミーも家名や自分の家が何をしているのかは全く言っていない。そもそもレオジミーはわざわざその説明をしなかったので、多分、知られたくないのかなとも思う。
『だから、あくまで意見。家がどうでも、無駄かどうか決めるの、レオジミーだよ』
普段使っている言語じゃないからやっぱり少しだけ喋りにくい。だけど、レオジミーに伝わったらいいなと思った。
まだそんなに生きていない、子供の私の意見。
レオジミーにとっては、何を言っているんだって思うかもしれない。人によっては年下の子供にこんなことを言われるのは嫌らしいって知っている。
ただこういう言葉を掛けたいなと思って、言ってしまった。
『ラウレータは、子供だけど大人みたいなことを言う』
『そうかな? 私はやりたいこと、やった方がいいと思う。反対されても、理由を話せばいいと思うの』
『それで納得してくれるか……分からない』
『分からない、ってことは可能性ある』
だから、やりたいなら言ってみればいいと思う。絶対に無理なことも多分あるだろうけれど、それでもやりたいことって言ってみて無駄ではないと思うし。
『……ちょっと考えてみる』
そういうレオジミーは少しだけ悩んでいるように見えた。
『絶対無理ってことじゃないなら、多分、大丈夫。それに今は駄目と言われたとしても、状況って変わる』
私の人生も、短いけれどもかなり色々と移り変わって行っている。
――だから、今は駄目でもきっとずっとその状況が続くことはないんだろうってそう思っている。
『私、お母様に会えない時期あったの』
私がそう言うと、レオジミーが驚いた顔になる。私がさっきお母様のことを話していたからというのもあるのかも。
私の年でお母様と離れ離れになったりってあまりしない気はする。
『でもね、今はお母様と一緒なの。会えない時悲しかったけれど、ずっと会いたいって思ってたの』
周りの人たちは、お母様のことを忘れろとそう言っていた。もう二度と会えないという人もそれなりに居た。
それでも私はいつかお母様に会いたいって思っていた。お母様の凄さを皆に広めたいとそうも思っていた。
私はそれを諦めてはいなかった。
そして今、私はお母様にまた会えて、一緒に過ごせて、幸せに生きている。
『周りは会えないって言ってた。でも私はまたお母様と会えた。だから、レオジミーも諦める必要ない』
そう、思って口にする。
レオジミーはやっぱり悩んだ様子だったけれども、頷いていた。
『……ちょっと話してみようかな』
『うん。それがいいと思う。レオジミーが魔術習ったら、手紙でも交換する? 魔術仲間増えるのは嬉しい』
本当は今回だけで手紙のやりとりをしたりとかするのは考えてなかった。こうして一緒に過ごしていてお友達になれたのかなとは思っていたけれど、レオジミーのことを少しだけ心配にはなった。
これからちゃんと周りにやりたいことを話せるのかなとか、そういうことを考えた。
だってやりたいことを我慢したりするのって、凄く疲れるんだよ。それに自分のやりたくないことを強要されるのも疲れちゃう。
それに同じ年頃で魔術の勉強を真剣にしている人は、あまり周りに居ないもん。だから一緒に魔術の話が出来たら楽しそうだなとも思った。
『……うん』
レオジミーは素直に頷いていた。
色々と考えを巡らせているのかもしれない。レオジミーの家がどういう立場なのかとか私は知らないけれど、私はお母様とディオ父様の娘だからそのことを言ったら手紙のやりとりも許可してもらえると思うんだよね。
お母様ともディオ父様とも、仲良くなりたいって人は沢山いるから。




