ラウレータの小さな冒険 ⑧
『ここの部分は、火を出す』
私はレオジミーに、魔術式について説明をする。細かい意味が違ったりするから、覚えているのだけを教える。
魔術の本に描かれているものは基本的に間違いはないから、そのまま教えたら問題はないはず。とはいえ、たまに本に書かれているものでも間違いが紛れていることはあるみたい。そういう時は問題視されて、本が回収されたりすると聞いた。
『火か』
『うん。図書館の中、流石に魔術使う、駄目。実演は出来ないけれど』
『……ラウレータは魔術を使えるのか?』
『うん、つかえるよ。私、魔術、大好き』
私は魔術を使うことがとても大好きだったりする。思った通りに魔術を使えるとワクワクして、嬉しい気持ちになる。それにロージュン国に居た頃から、お母様は私が魔術を上手く使用することが出来ると嬉しそうにしていたのだ。
お母様がああいう性格じゃなかったら私は魔術というものを嫌いになっていたかもしれない。
やっぱりお母様は凄いなと思ってならない。お母様の実家であるシンフォイガ家は魔術師の家系だった。だからこそ魔術の使えないお母様は嫁ぐ前にそれはもう大変だったらしい。お母様は恨み言なんて口にしないけれど、想像は出来るし、シンフォイガ家とお母様は関わろうとしないもの。
魔術師の家系に生まれたけれど、産まれつき魔術が使えない。
そんな状況だったら、もっと自棄になったり、駄目になってもおかしくなかったとは思う。それこそ魔術のことが嫌いになってもおかしくなかった。私が同じ立場だったら……と考えると、もしかしたら魔術自体を嫌いになっていたかもしれない。
でもお母様は、私が魔術を使うことを喜んでくれた。寧ろ魔術式を理解出来ることを楽しんでいる。そういうお母様が居るから、私は魔術が好きなんだ。
『魔術は、難しい。けど、面白い』
魔術という力は、危険なものである。それは魔術をこれまで習ってきたからこそ、私は余計に実感している。何か間違えれば怪我をしたり、最悪の場合は死んじゃったりするかもしれないとは何度も注意されていた。
『そうなのか。魔術……俺も習ってみたい』
『習うなら、ちゃんとした大人に最初は習うのがいい。私も、いつも魔術使う時、大人居る時』
私一人だけの時で魔術を使うことは中々ない。私はまだ子供だし、勝手に魔術を使って周りに被害を与えたりするのはさけたいもん。誰かが自分のせいで怪我したりするのも嫌だしね。
レオジミーは多分、私から魔術を習いたいと思ったのかもと感じた。ただ子供だけで勝手にそう言う判断をすることは出来ない。
一緒についてきている護衛たちも私の返答に満足そうだ。そうだよね、私が勝手にどうのこうの言うわけにもいかないもん。
やっぱりお母様やディオ父様から許可が出ないうちに魔術を教えるなんて危険なことは出来ない。
それにしてもレオジミーが魔術を習いたいという前向きな気持ちになってくれたことは嬉しいけれども、ちゃんと親の許可がないと駄目だよね。……ただ何だか見ている限り、もしかしたらレオジミーは親とか、周りの大人に自分の意思を告げられなかったりするのかな。
さっき、私がお母様のことを話すと何とも言えない表情をしていたし、お母さんと話しにくいのだろうか。
そんなことを思ってしまった。
そうしていると、レオジミーが言いにくそうに言った。
『……大人に相談、難しいかも』
『どうして?』
私はレオジミーがどういう家庭環境に居るのか知らない。どうして大人に言いにくいのかも分からない。
想像でなんとなく、こういう理由なのかなとかは分かるけれどそれはあくまで私が思っているだけだもん。だからちゃんと話を聞いた上でじゃないと判断なんて出来ない。
『無駄なことしないでほしいって言われる』
『無駄?』
レオジミーの言葉に不思議な気持ちになった。だって世の中、やってみて無駄だと言えることなんてきっとないはずなのに。
やってみて、こんなことやらなければ良かったって思うことはあるよ。無理やりやらされたことだったらやりたくないなって思うこともあると思う。
でもやりたいと思ってやったことならば、無駄ってことは無い気がする。
『そう。俺にはもっとやらなきゃならないことがあるからって』
『なんで、やらなきゃならないことをレオジミーじゃなくて、周りが決めるの?』
レオジミーが他人事みたいに言うから、ついそう言ってしまった。
だって、“やらなきゃならないことがある”って、なんで本人じゃなくて周りが言うんだろうってよく分からない。
そもそもレオジミーがやりたいことと、周りが言うやらなきゃならないということが一致してないなら、やる必要ないと思うの。
だってね、やりたくないことをやるのって辛いんだよ。
嫌なことを聞かされ続けたりするのも、嫌な気持ちになるだろうし……。そういう気持ちが続くと、きっとレオジミーも悲しくなってしまうと思う。




