第18羽 ドラマを観せられ、
授業の進行度との差異が気にかかってはいたが、さほど違いはなくひと安心した。むしろこちらの学校の方が遅かったので、少しの間は肩の力を抜いて学校生活に望めそうだ。
最後の授業では、春休みの期間で緩んだ心を引き締めて授業を心がけろという、僕の心中を言い当てたような、決まりきった担任教師の苦言を頂いた。
みんなも関心を持てずに聞いていたが、ゆるゆると話が脱線し始め、先生のプライベートの話を聞き出そうとしてから流れが変わった。
最後の授業とHRとは地続きで、時間の猶予はたっぷりあったが故に先生の失恋話が話題に上がってからは、怒涛の愚痴話がクラスを支配してしまった。
永遠とも思える時間の経過が、みんなの表情から元気が抜け落ちていった。クリスマス当日に振られ、しかも彼氏にはお前は三番目の女だと蔑まれて、挙句車から山道に放り出されてそこから家まで数十キロをヒールで、夜に徒歩で帰った話をされた。
重すぎて笑えなかった。
罪の重さに耐え切れなくなった戦犯。
先生に恋愛話をふった女子は、とうとう途中で泣きじゃくり始めた。
「ううう、ゴメンなさいぃぃ。私、私のせいでぇええ」「そんなことないって。こういうのって誰にでもあるから、みんなあなたのことなんて責めてないから」「……ああ、そうだぜ。俺だって失敗の一度や二度だってあるさ。あの時だって……。でも、でもさ、今の俺には……みんながいるからっ!」
後ろの席の方ではみんなが自分の失敗談を明らかにして、人間はいつだって失敗して成長する生き物なんだよ、という真理にたどり着いているようだった。そんな彼らの友情はさらに強固なものになって、この苦しかった時間も、きっと大人になっても忘れない思い出の一ページになるんじゃないかなって、思ったんだ。
どこの青春ドラマだよって思った。
感動して「僕らはみんな一つだ!」と絶叫しながら胴上げしているクラスメイト達が青臭くて、鼻がひん曲がる前に帰宅しようと思ったら件の担任教師に呼び止められた。




