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化石峠

作者: 湖灯

 「道」


 道は幾つもあり、まるで迷路のように繋がっている。


 だが、道の中には決して引き返しては、いけない道もある。






 ここは、化石峠へつながる道。


 登り始めたときは晴れていたのだが、1合目を過ぎたあたりから霧が立ち込めだした。


 前に進もうとしても、道は凄い霧で覆われ、どこが道で、どこが谷なのかも分からない。


 更に霧はどんどんと深くなるばかりで、一度止まると霧は増々深くなるばかり。


 だから私は、否応なしに前へと進む。



 後ろからオートバイがやって来た。


 オートバイは凄いスピードで、まるで霧を切り裂くラッセル車のように私の横を駆け抜けて行った。



 オートバイに気を取られて後ろを振り向いたとき、今まで進んできた道には、全く霧はなく晴れ渡っていることに気が付いた。


 スッキリと視界が開け、今朝出て来た麓の宿の様子までもハッキリと見える。


 もう一度前を向くと、やはり前方は濃い霧に覆われていた。


 これは、いったい、どういうことなのだろう?


 だが答えは分からない。


 分からないまま、私は前に進む。





 化石峠を上ってっ行くと、足に何か硬いものが当たり、立ち止まる。


 それは、さっき私を追い抜いて行ったオートバイだった。


 しかしそのオートバイは、クシャクシャに曲がり、傍には手袋がひとつ落ちていた。



 オートバイに乗っていた人は、どこに行ったのだろう?


 なにをそんなに急いでいたのだろう?




 オートバイが、どうしてあのようにグシャグシャになったのか、そして乗っていた人がどうなったのか、私に走る由もない。


 

 ただ私が知っていることは、急げば急ぐほど化石峠の道は、多くく曲がりくねってゆくということ。




 そして前方の霧が幾ら深くなり、道を進むことが困難になろうとも、決して引き返してはならない。




 引き返せば、道は無くなる。




 ここは、化石峠。


 思い出は、すべて化石になる。



 


 

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― 新着の感想 ―
 化石峠、って本当に存在するのですか❔  読ませて戴いてますと、ちょっとホラーチックだなあと云う印象がありました。  でも人生のメタファーにも思えましたよ。  時間て必ず一本線で嫌でも進んでしまう。 …
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