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ランクアップするために・7

「じゃあ、任せても大丈夫か?」


「この数なら私だけでも大丈夫だけど……メンバーの実力を見てランクアップ出来るかどうか判断してもらうだろうから、それは辞めとく」


「分かった。それじゃあ二人に頑張ってもらう間、俺たちは二人の足手纏いにならないように、少し離れておこう。こちらに気付かれた時は、どっちかが狼を倒しきるまで凌げればいい。これでいいかな」


「それで大丈夫。倒し切ったら、薬草を回収という方がいいかな」


 ミッツェルカとミハイルでササっと作戦を立て、オーリーにこんな形で獣討伐と薬草回収をします、とミハイルが報告すると、オーリーは黙って頷いた。

 その内心は、彼らは驕った考えをしているわけじゃなくて、新人にありがちな万能感を持っているわけでもなくて、気負うことは無いけれど、依頼にきちんと向き合う気があるのだ、と理解して、自らの考えを反省していた。

 同時に、本当に索敵通りなのか知りたいし、実力を知りたい、と冒険者としてワクワクした高揚を止められなかった。


 オーリーは最後までこのパーティーを見届けるのが役割。

 そんなわけでミッツェルカとクランが迷いなく歩いて行き、そして無駄口も叩かず、周囲を警戒しながら先へ進む。気配を探ったとはいえ、それに慢心しない辺りもオーリーからすると高評価だ。


 そして大体索敵通りの頃合いで確かにざっと見てそれくらいの狼の群れが、そこにいた。

 もう兎か何かが狩られてしまったのか、辺りが血に染まっている。

 なるべく気配を押し殺していたミッツェルカたちだったが、狩りをした反動なのか、直ぐに気配に気付かれてしまったらしく、狼たちに気付かれた。


「私が行く。クランはサポートを頼む」


 背中に背負っていた剣を引き抜くと同時、大型の狼たちが飛びかかって来る。

 白刃を煌めかせたミッツェルカは、飛びかかって来た三匹を一撃で全て仕留める。あっという間に地面に身体を横たえた三匹は、痙攣しているが致命傷のようだ。併し死んではないことから、余力を振り絞ってくる可能性を考え、クランがその三匹の息の根を立つ。

 その間に、ミッツェルカは残った大型狼たちへ殺気を放ち、狼たちをその場に縫い付けるように動きを止めさせた。

 その一瞬が勝敗を喫したわけで。

 動きを止めた狼たちの間を駆け抜けながら一撃で仕留めていく。


 ーー予定だったが。

 一匹だけ、ミッツェルカの殺気に動きを止めたはずなのに、それを打ち破るようにウォン、と低く鳴き声を上げたかと思えば、小型の狼たちの前に出て来たやつがいた。

 ミッツェルカは他の狼たちを仕留めてから、その一匹と対峙する。


 その一匹の狼は、ミッツェルカの圧倒的な強者感に敗北していたので、それならばせめて、とミッツェルカに頭を伏せた姿を見せた。


「お前、賢いな。私に服従することを選び、子どもたちを助けたい、と?」


 殺気を消したミッツェルカの言葉を理解しているかのように、一声鳴く。


「お前自身は生かしといてやれぬが良いのか」


 それにも鳴く。

 人語を解せるような獣が居るのか、それは知らないが、元々、ギフトという特有なものを持って生まれた国出身のミッツェルカは、それくらい頭のよい獣が居ても可笑しくないか、と考えた。


「どう思う」


 クランは、暗殺者の顔を持っているため、無表情に狼たちの息の根を止めていたが、ミッツェルカに尋ねられて、肩を竦めた。


「リーダーはどう思う?」


 ミハイルに問題を投げるが、それもまたおかしいことではない。こういうときに判断するのがリーダーなのだから。


「生かすとしても、どう生かすか、だろうね。この森で生きて行くのか、それともこの依頼を受けた冒険者ギルドに連れて行って判断を仰ぐのか。個人的にはギルドに連れて行って判断を仰ぐ方がいいとは思う。でも命の保障は無い」


 ミハイルの慎重な返事に、ふむ、とミッツェルカも考える。チラリと相棒を見た。


「どう思う?」


「ウチの子にすれば?」


 いとも簡単にラティーナは答えた。

 なるほど。

 冒険者が動物を連れているのも不自然ではない。


「お前たちの子は私たちが引き取るのならいいのか」


 一匹だけ残った大型狼に声を掛けると、それで良いと言うようにまた鳴いた。


「リーダー、それでいい?」


「ギルドが了承するなら良いよ」


 ミハイルがあっさりと承諾する。

 ミッツェルカはチラリとオーリーを見た。


「ギルドで獣を仲間にする際は」


「こういう獣なら首輪が必要だな。人を襲わない、無闇に暴れないなどなど、契約書に書かれているものにサインして、ギルドが作った魔術の掛かった首輪を嵌める。ギルドがフレーティア王国だかソルリア国だかに頼んで作ってもらっている特殊な首輪らしく、その首輪を嵌めると契約違反が起きたときには獣の命は狩られるし、冒険者は処罰の対象になる」


 オーリーが淡々と説明していく。

 ミッツェルカたちは、大国と言われるフレーティア王国や魔術大国にして実態が分からないというソルリア王国の名を聞いて、本当に存在するのか、とちょっと驚いた。

 てっきり伝承というか、あるらしい、と噂される国だと思ってた。

 いや、だって大陸一でかいと言われるオキュワ帝国のことすら良く分かってないし。

 ただ、魔術というのがあることは、信じられるから多分実在する国なのだろうな、とは思っていた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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