ランクアップするために・2
領地の北の街で一旦休憩を入れてから情報収集といく。こういったこともミハイルが指示するのだから、実はリーダーに向いているのだろう。オーリーはあくまでもランクアップを判定する職員なので、情報収集を手伝ってくれることもないし、方針に口出しすることもない。乞われれば教えることもあるが、それも時と場合。
最初からオーリーというかギルド職員を頼るような冒険者はランクアップにすら向いてない、とオーリーは思っている。リーダーが頼りないとか実力が足りないとかそういったことではなく、いざという時になって決断が出来ない冒険者はソロだろうがパーティーだろうが命が脅かされる。だから、このパーティーのリーダーが自然と指示を出すのを見て、リーダーを決めていなくても彼がリーダーのような役割を今までも行ってきたのだろう、とオーリーは考えた。
そしてリーダーの素質はあるようでもある、と。
「情報収集か。分かった」
ミハイルの指示に直ぐに頷くミッツェルカ。ミハイルの指示に間違いがあるとは思っていないし、仮に間違ったとしても自分たちでフォローすればいい、と思っている。フォロー出来ない事態に陥ったとしたらその時に考えればいいが、おそらくそんな事態が起きた時は、誰であってもどうにもならないような事態だと思うので、潔く諦めることを考えているだろう。
「情報収集を終えたら共有して、それから日が落ちてないようなら街中を見て回る。落ちたら明日の朝早くから動き出す。街中に薬草があるのか、そうじゃないのか。獣はどんなタイプなのか。そういったことを共有してからじゃないと知らない街で歩き回るのは得策じゃない。身勝手に歩いた挙げ句、目的の物を見つけられないで疲労だけ溜めても仕方ない。群生していない薬草だからこそ、多く見られる場所の情報を共有することは大切。獣も人を襲うほどなのか、小動物を襲うほどなのか、大きさや身体的特徴も知っておいた方がいい。愛玩動物として飼育されている、家畜にしているという区別もつかないと、下手に討伐するのは良くない」
ミハイルの具体的な指示で情報収集にしてもどのような情報を集めるのか分かりやすくなる。四人が頷くとそれぞれに散っていく。尤も手っ取り早いのは、この街にあるだろうギルドで尋ねることだが、それ以外にも街の人たちに確認を取るように尋ねることは大事だろう。
情報に偏りが出るのを防ぐためでもあるし、複数の情報が同じであれば、それは正しい情報に近いという意味合いもある。
そうして五人それぞれに情報を収集して情報共有のために再度集合する。
「森があってそこに薬草は割と多く見られる」
ニルクの情報にクランも同じことを聞いたという。ラティーナとミッツェルカも森に多く生えていることは情報として仕入れてきた。それだけ精度は高いだろう。そして簡単に仕入れられる情報であることから、森の奥までいかなくても生えているのだろうと推測される。量は分からないが見知らぬ土地の森の奥に行くことの危険性を考慮すれば、入り口付近でそれなりの量が取れることを期待する。
「獣討伐だけど、大型野犬らしいね。群れで過ごすのか十頭から二十頭くらいは居るらしい。人が襲われたことは無いらしいけど、いつ襲われるか分からない、とのこと」
ミッツェルカが情報を伝える。それはクランも聞いたのでこれも情報の精度が高いかもしれない。日はまだ落ち切っていないので、ミハイルは森の位置を確認するために自分とクランで偵察をしてくることを提案し、ニルクとラティーナとミッツェルカには部屋で休んでおくように、と伝えた。
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