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新たな土地へ・5

「で、どうする? 父親に会う? 帰る?」


 ミッツェルカに突き付けられたラティーナは息を呑む。忙しいだろう自身の父が共和国の視察団の一員としてやって来る。それはきっと自分と会うか連れ戻すか考えているから。

 ミッツェルカに諭され、ようやくラティーナは考えないようにしていた家族や家のことを考える。


「家族や使用人に育ててもらった恩はある。たくさんの人に支えられてきた恩も。それを捨てるようなことになったことは、後悔しないわけじゃない。だけど。その恩を幾許か返したつもりだし。なにより帰るとしても私一人で帰ることは、無い」


 ミッツェルカが一緒なら帰るけど、と言葉に出さず伝える。ミッツェルカも肩を竦め受け入れた。


「少なくても私は帰らないよ。帰っても親がアレだからね」


 ミッツェルカもまた気持ちを伝える。ミッツェルカが帰るのならラティーナも帰るだろうことは分かっていた。それでもミッツェルカは帰るつもりは無い。親子の情など互いに待ち合わせちゃいないが、かと言ってミッツェルカとしては帰らないことが、子としてあのクズ父親にしてあげられることだと思っている。

 ーーミッツェルカが帰れば、間違いなく父親の首と胴体を切り離すような暴挙に出るだろう。

 それが分かっているのに帰る気にはなれない。


「ティナは父親と会っておくといいと思うよ」


 ラティーナとミッツェルカの話が一段落したところでミハイルが口を出す。

 きちんと冒険者として登録した名前を呼ぶ辺りはさすが、といったところか。


「えっ」


 驚いた顔でミハイルを見る。

 ミハイルはラティーナが表情豊かになってきたことを嬉しく思いながらもその意図を説明する。


「帰らないという意思表示をするためにも、娘が無事であることを教えるためにも、ね。それにおそらく娘が家を出る原因を作った男が居ることも腹立たしいだろうから、その辺りのことも説明しておく方がいいだろうからね」


 ラティーナは、ニルクのことを持ち出されて、物凄く嫌そうな顔をして「ああそうね」と頷いた。


「まぁこの国に入国して来るまで間があるから、それまでは忘れて冒険者として動こうか」


 ミッツェルカが話を締めるように言えば、ラティーナもうん、と頷きひと息終えたこともあって、改めてこの領地のギルドを訪れて、依頼書を吟味することになった。


「この薬草採集は?」


「依頼書に絵が描かれているから見つけ易いかもしれないね」


 ミハイルが示す依頼書に、ミッツェルカが同意する。薬草の量が多めのようなので薬草が群生しているだろう場所付近で一晩泊まる必要がありそうだ。

 詳しくはギルドに尋ねれば教えてくれるだろう。

 依頼書のランク分けもミッツェルカたち向きであるから引き受けると言えば、受け付けてもらえるだろう。


「コレやります」


 ミハイルとミッツェルカで受付へ依頼書を持って行くと受付に居た男性が依頼書を確認する。冒険者登録者証……冒険者カードの提出を求められてミハイルが出すと、頷いたことから受理してもらえるらしい。


「この薬草採集はどの辺りが群生地ですか? 一晩あれば依頼を達成出来そうですか」


 ミハイルが尋ねると男性は、少し困惑した顔を見せた。


「もしかしてこの薬草採集は初めてですか」


 受付の男性に尋ねられたのでミッツェルカがコクリと分かり易くハッキリ頷けば、やっぱり困惑した顔のまま。


「実はですね、この薬草は領地の北の方でよく見かけます。ただ群生していることが無いので、北へ向かい、点在する薬草を採集してもらう、ですね。場所によっては野生の獣もいることがあって。この薬草採集の依頼を受けてもらうと、ついでにその獣の討伐も頼んでおりまして」


 ギルドからの依頼なので依頼書の掲示板に貼らずに、この薬草採集の依頼を受ける冒険者に改めてギルドが獣討伐を依頼しているのだ、と説明された。


「それなら大丈夫。討伐の数とか報酬とか教えてくれれば」


 ミッツェルカがアッサリと受け入れたので、ギルド職員を誰か付ければ、ランクアップ試験も一緒にやれる、とまで説明があったので、パーティーを組んでいる五人まとめてランクアップしてもらえるのか確認して、大丈夫だと分かったので、ギルド職員の手配も頼んだ。

 日程を調整してこの日は、宿へ戻った。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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