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新たな土地へ・1

 首都を早々に出立した五人。次はどこに行こうか考えては無かったので、来た方向とは反対の土地へ足を向けてみよう、ということにはなっていた。風の向くまま気の向くまま、というやつである。


「取り敢えず適当に歩くか」


 ミッツェルカが天気もいいし、と伸びをしながら言えばラティーナもそうね、と頷く。街道沿いを歩くのか、敢えて街道から外れて歩くのか。それもまた気分次第、という二人。ふと、ミッツェルカがラティーナに暇つぶしを兼ねて賭け事を持ち掛けた。


「これから歩いて行って、次の土地に行くまでの間で最初に会うのが男性か女性か賭けてみない?」


「面白そう。賭け事の内容は?」


 ラティーナが直ぐに頷く。ラティーナがニルクと並んで歩き、ミッツェルカがクランと並んで歩くというものになったのだが、ラティーナが不服だという顔をして見せた。


「なぜ」


「あまり放置しているとギフトが暴走して何をやらかすか分からないから。私たちもそうだけど、ギフトが珍しいものを与えられた場合、往々にして暴走の可能性があるでしょ」


 ギフトの暴走。

 ミハイルのように結構多いギフトなら兎も角、ラティーナもミッツェルカもニルクも他に居ない或いは居ても数少ないギフト持ちの場合、どういうわけか暴走というものが起こりがちだ。

 ニルクの研究者というギフト持ちの暴走で、過去に研究対象が人外であったものの、その研究が捗らなかった結果、何をどうしてその結論になったのか不明だが、研究対象である動物と結婚する、と宣言してその動物と部屋に閉じ籠った。

 一週間閉じ籠った結果、飢餓状態にあった動物が研究者ギフト持ちを食べようと喉元に喰らい付く、ということが起きた。幸いと言うべきか研究者ギフト持ちは、弱っていた動物の牙から逃れられたが。その時の怪我が元で命を落とした。動物の方は餓死した。

 ……という話がギフト持ちの暴走話としてよく伝えられている。

 ラティーナもソレを思い出したのか、顔を引き攣らせた。


「つまり、殺される、と?」


「そうなりそうなら私がアレの命を奪うけどさ。相棒の方が大事だし。でも暴走させる前に適度に思い詰めさせないように対応するのは間違いじゃないと思うんだよね」


 ミッツェルカの言い分も分かる。併しラティーナとしては気に入らない。

 抑々、婚約破棄を申し出てきた男だ。恋情は無くても婚約者として相応しくあるように努力してきたものを捨てさせた奴だ。そんな奴のために暴走をさせないためとはいえ、暫くの間、二人で歩くとか苦痛でしかない。


「嫌だわ」


「そうだろうから、賭け事なわけだ」


 賭けに勝てば別にニルクとラティーナが隣同士で歩く必要など無い。そういうことだ。

 ラティーナは嫌々だが暴走の可能性を考えると、賭け事ということだし、と諦めることにした。


「私、男性ね」


「分かった。じゃあ私が女性だね」


 ラティーナが圧倒的に旅で出会う確率の高い男性を選ぶ。ミッツェルカはそれに抗議もせずにアッサリと受け入れた。

 別にミッツェルカは賭けに勝っても負けてもどちらでもいい、と考えていたからである。

 そうして街道に沿って歩くと、冒険者パーティーらしい男女四人が歩いて来るのが見えた。


「この場合は……」


 ラティーナが期待溢れた目を向けるのでミッツェルカは「成立だね」 と笑顔で賭けの成立を宣言した。どちらも歩いてくるのであれば、賭け事は成立しない、という取り決めが無かったのだから仕方がない。ラティーナは項垂れつつ了承した。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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