首都入り・1
さて、順調に旅は進んで首都へ。入国審査ならぬ入都審査というものがあるらしい。ユノラたち三人は、エンゾから救えなかったことを気に病んでいたギルドマスターの厚意によってユノラ・ヨンナ・マリの身分証を作ってもらってある。ミッツェルカたちは持っている冒険者の身分証を提示して、難なく首都入りを果たした。
「首都入りも審査があるとは思わなかったな」
ミハイルが困惑したように言うが、王都や公都でも審査までは行かなくても身分証を提示したので、そんなもんか、とミッツェルカとラティーナは思っていた。身分証を提示するだけで通してくれる他国と違い、メゾフォンテ共和国の首都での審査は入国審査と同じく、身分証提示と共に首都に来た理由を尋ねられ滞在期間も尋ねられる。犯罪者ではないか知るためだろう。まぁそんなことを聞かれても犯罪者が素直に犯罪者です、とは言わないが、荷物検査にボディチェックもされるのが、入国審査で入都審査も同じだった。
尚、女性は女性の審査官がボディチェックや荷物検査をするので、ミッツェルカもラティーナも文句は無いし、ユノラたちも文句は言わなかった。
「そうだ。こちらの人たちを送り届けたことを首都のギルドに報告したいのと、こちらの人たちは先程も言ったように首都で生活したいらしいので、役所の場所を教えて欲しいのですが」
一応、ユノラたちの護衛は冒険者として受けたので、ユノラが依頼人とはいえ、冒険者ギルドに報告してギルドを介して報酬のやり取りをしないと後々面倒くさいことになる。それでギルドの場所と役所の場所をだいぶメゾフォンテ共和国の言葉が上手くなったミハイルが入都審査官に尋ねた。
「ああ、ギルドはこの審査砦を出て左側に直ぐにあるよ。役所の方は首都の中央だから。一際高い建物だから見れば分かる」
親切に教えてくれた審査官に礼を述べて、立ち去ろうとしたら、審査官が逆に声を掛けてきた。
「君たちは、この首都に領主が居る、領地からやって来たって話だったね?」
ミハイルが頷く。だからエンゾのような男がのさばっていたのだから。共和国の政の行い方は画期的だし、悪くない方法ではあるが、領主が居ない時にこそ目を光らせる方法は考えた方がいいだろう、とは思う。これからの課題だろう。
「実はね、近年、領主の居ない所では悪いヤツらがのさばる傾向にあって、領主がこの首都に居るという土地から来た者には、その辺りのことを尋ねて上へ報告することになっているんだ。君たちの土地では厄介者は居なかったかい?」
……なるほど。その辺りのことを領主たちも気にしているらしい。ミハイルはユノラに視線を向けて話すかどうか託すことにした。
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