首都へ・6
「へぇ。じゃあ他国からの要人がたくさん来るわけか」
クランがふむふむと頷きながら更なる詳細を聞いていく。どうやらトルケッタ公国からも使者団は来るらしいし、何よりもクラン以外の皆の生国・ライネルヴァ王国からも使者団が来ることを耳にした。とはいえそこで動揺するような柔な精神は誰もしていないので、完全に他人事として聞いていたが。
「そうそう。警護って言っても別にお偉い人たちの近くに行くわけじゃなくて、お偉い人たちの護衛をしている騎士様たちの更に護衛みたいなもんでよ。後は国民のみんなが興味津々でお偉い人たちに気軽に近寄らないように牽制するためっつーか。そういった仕事だな」
「へー。報酬は?」
「一人金貨一枚」
「ほー。そりゃ良いな」
「まあその分だけお偉い人たちに気を遣うし、何日も拘束されるようなもんだから、難しいとこだな。新人とか楽して金稼ぎたいならうってつけの任務だけど魔獣討伐とか魔獣までいかなくても野犬を追い払う仕事とか、希少品を取りに行く依頼とか、そういう冒険者らしい仕事をしたい奴は、やらない仕事だな」
「何日も拘束されるのは勘弁だなぁ。その仕事は辞めとくことにするよ」
クランは肩を竦めて情報ありがとうな、と更に酒を奢る。いいってことよ。と更に上機嫌になった冒険者たちが、その任務を選ばないなら、十日以内に首都に行って首都から出た方がいい、とまでアドバイスをする。
どうやら早ければ十二日後くらいに他国の使者団が到着するらしい。というのも、首都でその任務依頼が既に出ていて十日後までに何人募集と緊急であったとか。大体そこから二日くらいで任務内容を伝えられてお偉い人たちとの挨拶や距離感を教えられるのが通例だ、と。
クランはミッツェルカに視線を向けてミッツェルカが軽く頷くのを見てから、もう一度情報をありがとうと礼を述べた。
ユノラたちも話を聞いていたから、ミッツェルカとラティーナを等分に見て来たが、十日以内には首都に到着予定だから気にしないでいい。護衛を続けて首都に送り届けるよ、とラティーナが安心させるようにユノラに笑いかけた。
実際、のんびりと宿を取りながらの首都への馬車旅だが行きだけなら十日以内には首都へ到着する予定である。……なんのトラブルも起きなければ、という注釈付きにはなるが。
「無事に首都に送り届けるのは構わないが、その先のことを考えておいた方がいいよ。住む場所とか仕事探しとか。買い物場所も必要だし首都の治安が良くても、更に治安の良さそうな場所を見つけて住む場所を確保した方がいいだろうし」
ユノラたちにその後のことをミッツェルカが示唆する。ユノラも、それはそうだ、とハッとした顔をした。何しろ首都に到着したらミッツェルカたちとはお別れで、自分たちで生きていかなくてはならないのだから。その辺りのことが頭から抜け落ちていたユノラとマリは指摘されて気まずそうな顔をしたが、そこまで落ち込むことは無いよ、とミハイルに宥められて頷く。
首都に到着したらどうするのか、その辺りのことをユノラとマリが考えていると、チラリと話を聞いていた先程の冒険者たちの一人が、まず首都の役所へ行って住む場所や仕事案内などを紹介してもらうといい、とアドバイスした。首都では、働き口や住む場所の紹介を役所がしてくれるのだそうで、ユノラとマリはホッとして、そうすることに決めた。
そこで今後の方針も決まったこともあり、お開きとなった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




