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従姉妹との邂逅・2

目覚めると、天使がいた。


うん、嘘じゃない。ラティという名の天使だ。但しこの天使、やけにリアリティあった。どういう事か? こういう事だ。


「あ、目ぇさめた? あくやくれいじょうって何?」


「忘れて下さい」


「わすれられるわけないでしょ! だいたい、このかわいいわたしをみて、あたまがいたくなるなんてしつれいだわ!」


……こんな具合に。ゲームやアニメのラティは、こういう上から目線で、自分は可愛いと言い切る令嬢だ、とは言っていた。


うん。可愛いもん。許せるよ。


だけど、それを認めて唯々諾々と受け入れたら、正しく悪役令嬢かもしれない。ちょっと今から矯正すべきでは?


「ラティーナさま」


「なぁに」


「たしかにラティーナさまは、可愛い。でも可愛いからって自分の思い通りにいくわけではないですよ」


ラティは、驚いたような表情でまじまじと私を見た。それから、ニコッと笑った。マジ天使だった。


「そういうことをいったの、あなたがはじめて。ええと」


「ミッツェです。ミッツェルカ・ドレイン。ラティーナさまのいとこです」


「うん。ドレインはくしゃくの子だよね? ミッツェ。わたしをラティってよんで?」


かーわーいーい。

超可愛い。ああ、ドルオタの血が騒ぐ! 誰か! デジカメを! この天使の満面の笑みを記録しなくては! これは私の使命だ!


……というわけで。私は、この日からラティの性格矯正を始めた。ラティは、自分が可愛い事を分かっていて、そう言えば、皆が何でも言う事を聞いてくれた事が不満だった。でもそれは仕方ないと思う。


ラティには使用人しか居なかったから。ラティの父親は公爵の仕事が忙しく、ラティの母親は公爵夫人の務めは果たすものの、愛人に現を抜かしていた。故にラティは見向きもされない。で。ラティは兄が居るけれど、この兄は歳の離れた方で、異母兄。病死したガサルク公爵前夫人の息子は、ラティと私が5歳の時、14歳。まぁ多感な年頃というヤツで、ラティとどう接すればいいのか分からなかったわけだ。


おまけに既に学園で寮生活を送っていたからね。偶にしか会わない異母妹と仲を深められない。よってラティは、使用人達に我儘を言うだけの子になっちゃった。そんな時に私と出会い、私が自分の言う事を聞かない子だ、と分かって嬉しくなったんだね。軈て、私の兄上とも仲良くなり、私と兄上がラティの家族になったのさ。


家族が出来たラティは、そこからはゲームやアニメで言われていた悪役令嬢とは掛け離れた、淑女の中の淑女で令嬢・令息方の憧れ・ラティーナ・ガサルク公爵令嬢へと進化した。


そして殿下と出会い、殿下に一目惚れされたが……後は先程語った通りさ。


ラティは殿下を好きになれずとも、殿下ときちんと向き合うつもりだったよ。バカが、向き合わなかったから、諦め始めていたけど。それでもあのぶりっ子伯爵令嬢が現れなければ、多分、ラティは完全に諦めはしなかったし、バカに見切りも付けなかったはずさ。

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