冒険者としての始まり・3
お待たせ致しました。
「お嬢様、どうでした?」
借りてる家に四人で帰宅して、今度は疲労している中で夕ご飯をどうしようか悩んでた所へクランが顔を出した。どうやらクランの方も本日の仕事は終了したらしい。
「無事に終わったよ。ニルクのギフトが発動して効率よく掃除出来たし」
「ほぅ……」
「お兄ちゃんのギフトは大活躍だったしねー」
「まぁそうですよね。分かります。それで四人で何を深刻な顔を突き合わせて話し合ってたんです?」
側から見ると深刻そうな四人だった、と知ったミッツェルカは苦笑して夕ご飯の話し合いだと説明した。ミハイルが自分が作る、と言い張るが今日は疲れただろうから、ゆっくり休んで欲しくてミッツェルカが簡単な物を作ろうと提案したら、ミハイルが「疲れている可愛い妹にそんなことはさせられない!」 と反対してきたので困っていた……と。
「なんだ、そんなことなら今日は初仕事が無事に終わったことを祝って、外へメシを食いに行きましょう」
クランからあっさりと代替案が出た。いや、ミッツェルカもその案が無かったわけではないが、貯金したいのに、金を遣うのはどうなのか、とその案を自分で却下していたところだった。
「でも」
ラティーナもお金を貯めた方がいいことを分かっているのでクランの提案に、異を唱えようとする。クランはそれを遮るように片手を出して続けた。
「お祝いなんだから、いいと思いますよ。それに、金は俺が出します。こういう時はベテランが若手に奢るのも冒険者の親睦の一つなんですよ」
クランの話に、四人は顔を見合わせる。こういうのも親睦だと言うのなら必要なことなのかもしれない。
「それに、俺の護衛という仕事、結構貰える額が良かったんですよねー。もちろん、貴族の護衛とか美味しい仕事じゃないですよ? お貴族様の護衛というのは比較的楽なことが多いので低ランク冒険者でも出来るんです。だからそういうのは低ランク冒険者に回す。これもベテランの気遣いです。とはいえ、貴族の中には、そんな所に行くのか? というような依頼もあって、そういった時は高ランクの冒険者が護衛する場合もありますがね。ギルドがその辺は采配してくれるからケンカにはならないですが」
暗殺者の割に冒険者のことに詳しいクランは、表向きの稼業でもあるのでそれなりに詳しいですよ、とヘラリと笑う。知らないことを教えてくれるのだから、その辺は誰も突っ込まずに心得を聞いておくだけにした。
「じゃあお言葉に甘えて奢ってもらおうか」
ミハイルが話をまとめる。反対意見が出なかったので、食堂へ足を運ぶことにした。
「そういえば、貴族の護衛じゃないならどんな護衛?」
「商人が買い付けに行く護衛だともっと高いんですけどね。道中の安全を買うわけですから。俺のは、人から恨まれやすい金貸しの護衛です。金貸しって、どんだけ善良でも金を返してもらわないと仕事になりませんからね。借りるくせに返さない奴も居るんですが、そういう奴は逆恨みをするもんでねぇ。まぁ俺が護衛をしている金貸しはどっちかっていうと悪どい金貸しみたいなんで、恨まれても仕方ないと思いますけども。でも、だからこそ護衛として雇うのにギルドだけでなく護衛本人への支払いも悪くないんですよね」
善良ではない金貸しの護衛……。それって大丈夫なのか四人は不安に思ったが、クランが大丈夫だ、と笑うのでそれ以上は尋ねずに食堂で味が濃いけれど美味い野菜たっぷりスープやステーキを食べて一息ついた。
明日の朝、冒険者ギルドに行き、薬草採集の依頼があったらそれを受けよう、と四人は話し合い、疲れた身体を早々に休めることにした。
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次話はなるべく早くお届けするよう頑張ります。




