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目指せ、メゾフォンテ共和国・8

 ギルドのお隣の仲介者は、ミッツェルカの記憶にある前世で言うと不動産屋のようだ。冒険者ギルドの依頼書を見るに冒険者が何でも屋ならば仲介者は不動産屋といったところ。ただ、何かトラブルがあれば対応もしてくれるとのことなので大変有り難いのだろう。そのトラブル解決料は必要だが。物件をいくつか所持しているとのことで、キッチンとトイレと大人五人が寝起き出来るのが最低限。出来れば風呂付き物件がいいが、貴族ならば兎も角平民はあまり家に風呂付きの物件は考えていない。平民の場合は大衆浴場だからだ。だが、ミッツェルカのように長期滞在の冒険者の中には、こうして家を借りる者も居るらしく、風呂付きの物件も一つだけあった。

 高ランクの冒険者は大抵風呂付き宿を長期滞在で利用する契約を宿側と取り決めるらしいが、そういった宿は数が少ない上に、我の強い高ランク冒険者が多いため、宿の取り合いにならないよう、あの宿はあのパーティー専用、のような暗黙の了解があるらしい。


 ミッツェルカは仲介者の説明を聞いて納得しつつ、風呂無しの物件の金額が三十日の賃貸で銅貨百枚・銀貨十枚・金貨一枚と知る。九十日で銅貨三百枚。今の宿を一部屋借りている方が安いが、それは一部屋の換算。実際は二部屋借りているわけだから宿代の方が高い。尚、風呂付きは三十日で銅貨百五十枚。……高い。まぁ風呂付きなのだから仕方ないのだろう。だが、宿泊中の宿を百日借りたとして、二部屋で銅貨六百枚・銀貨六十枚・金貨六枚。風呂付き物件を九十日借りて銅貨四百五十枚・銀貨四十五枚・金貨四枚と銀貨五枚。

 どう見積もっても長期滞在ならば借りる方が安い。ちなみに買うとなると金貨十枚……つまり銅貨千枚だが、一生そこに暮らすわけだから、そう考えると金貨十枚は安い。


 しかしミッツェルカは忘れていた。前世の記憶で物を考えているため、こちらの世界では平均寿命が男女共に前世よりも短い。貴族も平民も前世より短いということに。但し貴族と平民だと貴族の方が多少長生きではあるが、前世の日本人の平均寿命よりは短かった。だから金貨十枚というのは、かなりの高額物件なのである。さておき。

 現状、金の管理はミハイルが行っているが、ミッツェルカも大体の金額は把握している。三十日ごとに銅貨百五十枚を支払うだけの金額があるか、というと正直、無い。ランクを上げていくわけだから長期滞在するわけで。三十日分はあっても六十日後は支払えるかどうか、といったところ。冒険者登録したばかりで収入が確保出来ないのに、風呂付き物件を借りる程、ミッツェルカも無謀ではない。風呂無し物件ならば確実に九十日分は前払い出来る。風呂無し物件を借りることに決めた。


 いくつかあるようなので、今から内覧に行くか、と問われたので頷く。ラティーナがコソコソとミッツェルカに問いかけた。


「風呂付きでも九十日くらい平気なくらいはあったよね?」


「あるね」


「なんで風呂無しにしたの?」


「あのね、ラティ。冒険者登録したばかりで、ランクは最下位。となると依頼書も限られて来るし報酬もあまり期待出来ない。だけど生活はする。家だけじゃなくて、多少は服も買い替えるしそれ以上に食糧を確保しなくちゃならない。生活するに辺りベッドやクローゼットはあるかもしれないけど、他は無いと思って動かないと。そうすると支出は抑える」


「ああ、そうか。そうなのね」


 ラティーナは侍女が着替えも髪を整えるのもやってくれる生活を送っていた。家を飛び出そうと考えて着替えも髪も一人で整えられるようにしていたが、カーテンは開けてもらうしお茶も淹れてもらう生活は飛び出すギリギリまで変わらなかった。ミッツェルカに説明されて納得することが多くて、自分が如何に出来ることが少ないか、落ち込んだ。

お読み頂きまして、ありがとうございました。


ようやく五人の旅に一段落です。暫く拠点がメゾフォンテですが、だからといってメゾフォンテ王国巻き込んで云々なんてことにはならないです。(予定。多分)メゾフォンテ王国の知り合いは出来ますけども。

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