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情報交換・3

「いや……ラティがそう思うのは解る。セラクは王族の仮面を上手く被っていたからな」


「確かにあまり関わらなかったから仮面を被っていた、と言われれば頷けるけど」


ニルクの言葉にラティが戸惑う。


「セラクは野心家でな。そしてあの笑顔で周りを取り込むのも上手い。セラクの周りは崇拝という表現がぴったりな程取り込まれている」


「では……貴方を追い出す好機を狙っていた、と?」


ラティが息を呑んだ。確かにセラク殿下の明るい笑顔からは想像つかないだろうけど。私は胡散臭く思えていたから、寧ろそうだろうなぁとしか思えなかった。いや、追い出すのではなく……


「命を狙っていた、だな」


あ、やっぱり。ラティが顔色を変えた。さすがにそこまでだとは思っていなかったのだろう。


「そんな」


「とても幼い頃はともかく。そうだな。セラクが5歳を超えた辺りから、自分が国王になるには俺が邪魔だと気づいていたのだろう。セラクは国王の座に着いて自分の力であの国をどうにかしたい、と望んでいた。どうにか、というのは、セラクの理想の国だな」


「セラク殿下の理想の国?」


ニルクの言葉に引っかかってラティは尋ねる。ニルクは「そこまでは分からない」 と首を振った。


「うーん。んー。ううん?」


「ミッツェ? どうした?」


私は記憶に引っ張られてなんだか変な声を出していたらしい。お兄ちゃんが心配そうに見ている。同時にラティにもニルクにもクランにも見られている事に気付いて、あーやらかした。と知った。


「うーん。ちょいと記憶に引っかかっていたから、思い出そうとしていたんだけど。いや、今は後回しにしよう。取り敢えず、ニルクがセラク殿下に狙われていたのは、理解出来たよね。ニルクを殺そうとしていたあの護衛もセラク殿下の命を受けていたんだと思う。ニルクは子を作れない。そういう処置をしているのに、それでもニルクを殺したいのは、ニルクが生きていると厄介だから。だって国王陛下しか下せない処罰を勝手に下したからね。国王陛下が戻った時には、出て行くニルクを止めたが、止めきれなかった……とでも言えば、ねぇ。誰もセラク殿下の裏の顔なんて知らないし。でもニルクが万が一帰ってきたら、という事を考えて殺したかったんだろうね」


私の説明にラティがそれでも信じられない、という表情になる。それはそうだよねぇ。セラク殿下って外面良かったもんね。あの邪気の無さそうな笑顔で「義姉君」 なんて言われてたもんね。でも、アレ、無邪気に見せかけてただけだし。


「ミッツェがそう言っても信じられないわ……」


「だろうねぇ。だって、無邪気そうな笑顔で義姉君なんて言ってラティを取り込もうとしてたもん」


「取り込む⁉︎」


ラティ、狙われてた事に気付かなかったんだね……。


「ラティがニルクの事を好きじゃなかったからね。まぁもし好きだったら速攻で排除されてたとは思うんだけどさ。ラティが婚約者としての義務で王太子妃教育受けてたじゃん。そしてラティは優秀だった。セラク殿下は自分の婚約者とラティを常に天秤に掛けてたよ。ちなみに私が知ってるのは、セラク殿下の婚約者ちゃんが私はいつでも捨てられるから、捨てられたくないなら必死にならなくちゃ。って悲壮な顔で呟いてたのを聞いたから。学園で呟いてたの聞いたよ」


ラティが真っ青な顔色で震えた。セラク殿下の裏の顔を知らなかったから、婚約者ちゃんの悩みにも気付かなかった事が悔しいのだろう。


「まぁだからさ。婚約者ちゃんが頑張って必死に王子妃教育に喰らい付いていたから、これなら王太子妃教育が加わって王妃教育に切り替わっても大丈夫だろう、とセラク殿下が判断したから、ラティは国外追放出来たんだよね。まぁもし、セラク殿下がラティを諦めずに国外から出さないように手を回したとしていたら。その時は……」


私はそこで言葉を区切った。


「その時は?」


おおい! 私が言わないって決めたんだから、そこは察せよ、ポンコツ元王太子!


「その時は、私の特殊ギフトを発動させてでも、阻んだよ。私のラティの邪魔をするなら誰で有っても許さない。それだけ」


少しだけ殺気を乗せれば、お兄ちゃんもラティもニルクもクランも寒気が走ったように震えた。が。


「ミッツェが、カッコいい!」


ってラティがキャッと顔を赤くして誉めてくれた。

お久しぶりです。前回の更新2月か……。月一くらいになるよう頑張ります。


お読み頂きまして、ありがとうございました。

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