情報交換・1
「さて、じゃあ先ずは情報交換しよっか」
ニルクが王太子を辞めた事情を取り敢えず納得させたミッツェはサクッと話題を変える。渋々ながらのラティは、ニルクから距離を取ってミッツェに近寄った。寄るな触るな精神でニルクを睨んで牽制している。
「王太子の自覚無いダメな男は放置していいから、ラティ、機嫌直して」
ミッツェがニルクを貶しつつラティに笑いかける。
「本当に自覚無いよね。王族の義務とかどう考えているのか」
「ラティがそれ言っちゃいけないよ。だって私もお兄ちゃんもラティも貴族の義務放棄したし」
「それは、そう、だけど」
ミッツェの指摘にグッと唇を噛むラティの頭をミハイルが撫でる。ちょっと表情を緩ませたラティが可愛いなぁとミハイルもミッツェもついでにニルクも思った。
「まぁ、あの国は元々オカシイから、オカシイ事に気付いた人間はあの国には居られないから仕方ないよ。ニルク、気付いたんでしょ? あの国のおかしさ」
ミッツェの話にニルクは目を丸くする。どうしてそれを? とでも言いたそうだ。
「良く、分かったな?」
「寧ろ、国王の息子として生まれて、将来的には次期国王のニルクが気付いた事の方が凄かったよ。正直、最初は、ラティを無理やり王妃にして国に縛り付けるだろうなって思ってたから。ラティが逃げようとしているのを知りながら、閉じ込める方かと思ってた」
「俺の執着心がそっちに働けばそうなっただろうが、ギフトの力が作用しているらしくてな。俺の執着心がラティの望むままにって気持ちだったんだ」
「ああ、研究者って便利ね。研究対象の望むままに援助しようとしたのか。良いギフトだわ。という事で、情報交換したら、取り敢えずトルケッタも出よう。第二王子もとい、現王太子サマは追っ手を掛けてこないだろうけど。国王が解らないからね」
「ねぇ、ミッツェ、さっきからどうしてライネルヴァがおかしな国とか、このバカ元王太子がそれに気付いたとか、よく分からない事言ってるの?」
「うーん。まだちょっとトルケッタ公国内だとゆっくり話している時間が無いんだよね。諸々を説明するにしても、ライネルヴァから離れた後にしたい。だから、ニルクが持ってる情報とクランが仕入れて来た情報を交換して摺り合わせたいんだよね。その情報によっては、ゆっくり話せるかもしれないし、今すぐこの国を出て行く方に頭を切り替えなくちゃかもしれない。だからもう少し待ってくれないかな」
「でも、やっとリノーヴに着いた所だし」
「でも、ラティの父が影放ったってクランが言ってたでしょ。公爵家の影優秀だから直ぐ見つかる。もう明日辺りには。だから出来れば朝イチで出たいけど、ニルクの持つ情報によっては、どうにかなるかもしれない。だから、ちょっと待っててくれないかな」
「……分かった。ミッツェを信じる」
「ありがと」
そんなわけで、一段落したためにミッツェは改めてニルクとクランを見やった。
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