現れた元王太子サマ・6
「「えっ?」」
ラティとミハイルが声を上げる。クランは声は上げなかったが、目を丸くしていてやはり驚いたようだ。
「私も最初は気付かなかったけどさ。ラティが絡むとポンコツになるくせに、ラティの為ならどこまでも優秀になるから、不思議だったんだよね。ラティを好きだとはいえ、ラティがニルクの基準になっている事が」
「私が基準?」
「ニルクの行動って全部ラティのため、だからね。そのくせ、ラティと関わった途端にポンコツとか意味不明じゃん? 最初は好きな子に良い態度が取れない不器用な奴だとばかり思っていたんだけど」
「ちょ、ちょっと待って! えっ、なんでミッツェはそんなにアホ元王太子に詳しいの⁉︎」
ミッツェが淡々と説明していくが、飲み込めないラティが言葉を止める。
「詳しいというか。ニルクがラティを好きなのは、私もお兄ちゃんも気付いてたし」
「えっ! そうなの⁉︎」
ミッツェの発言にラティはミハイルを見る。ミハイルはコクリと頷いた。
「全然気付かなかったですけど⁉︎」
ラティが自分は鈍いのか、とショックを受けるがそうじゃない。
「だから、ラティを目の前にすると、途端にポンコツになって、好きなのに全部裏目に出るのがニルク。だから、好きな子には優しく出来ない、ツンツンしちゃう不器用な奴だとばかり思っていたんだよ、最初は」
ラティもミッツェに言われて、そういう人が一定数居る事は理解したのか、頷いた。
「最初は?」
ミッツェのその言葉にミハイルが反応する。
「なんていうか、勘? ただの不器用な奴だけじゃ無い気がして。どうにもラティしか見えてないっつうか。だからおかしいって思ってさ。直接、ニルクに尋ねたんだよね。幸い、あのオトウサマが、私を男として学園にも入学させてたから、私がニルクに近づいても同性同士として見られて、咎められない。これが女だったら色々人の目気にして、好き勝手出来なかっただろうけどさ。そんで、話戻すけど。ニルクに尋ねた。もしかしてラティが全て? ってさ」
ニルクは静かに頷く。ミッツェから口を出さない、と言われているから、ラティと居られるチャンスをダメにしたくないため、黙っているのだ。
「まぁこうやって肯定されたから、ちょっと考えて。もしかして特殊ギフト持ちじゃないかなって。特殊ギフト持ちって、何となく生きるのが窮屈じゃん? ニルクも生き難そうだったから、もしかしてって思ったんだよね。ニルクは王太子だから、いくらラティが好きでも、ラティが全ての行動の基準はマズイよね。国や民や貴族とか国交とか、そういうのも大切にしなくちゃいけないのに、それをしている感じじゃない。ラティの為にしか動けないのを見て、特殊ギフト持ちなら、納得出来たんだよね」
そうして、ラティの為に、婚約破棄という行動を取った。ニルクにとって、それだけのことだった。




