現れた元王太子サマ・4
本年もどうぞ宜しくお願いします。
「な、ならば、何故、勘違いしていた事を否定しなかった⁉︎」
「ええー。面倒くさいから。だって元ポンコツ王太子サマに女って話そうと話すまいと別にどうでもいいじゃん? 私は、兄とラティさえいれば他はどうでもいいもん」
「お嬢様! そこに俺もいれて下さい!」
「えー。別にクラン居なくても生きて行けるし。ところで、そこでボーッと突っ立ってる元ポンコツ王太子サマの偽の護衛騎士サン? 逃げるに逃げ出せないで固まってるけどさぁ、他人事じゃないよ? アンタ、国に帰って報告するのは勝手だけどさー。報告するのは、国王陛下だけにしときな? 第二王子や王妃にラティの実家である公爵家にも話すなよ?」
一向に動く事が無さそうなニルクの偽護衛に殺気を乗せてミッツェは言ってみる。途端に、偽護衛は脂汗を大量にかいてその場にへたり込んだ。ミッツェの心の中では……(ヤダなぁ。こんなちょっとした殺気で怯えないでよ)とうざったく思っていた。
「お、おま」
ニルクが口を開閉して青褪めた表情でミッツェを見た。
「んー? なに」
「その殺気は」
「おー、さっすが元ポンコツ王太子サマ。いちおー、そういうのに気付くんだね」
「気付くだろう、そんな殺意」
「えー、意思では無いなぁ。殺そうと思ったわけじゃなくて気配を放っただけ」
「同じだろう」
「違うよー。殺したいと思ったわけじゃない。殺すって言っただけ」
「感情や意思ではない? 食べることが当たり前な事のようなもの?」
「おー、さすが、ラティ以外は優秀なポンコツ」
「ポンコツは余計だ」
「んじゃ、ニルクで良いよね。王太子には戻らないわけでしょ。去勢でもしてきた?」
「うむ」
「そっか。そっか。そんな状況になってもラティと一緒が良かったんだね」
「うむ」
「って事で、帰国したら国王以外に話すのダメだからねー。まぁ仮に第二王子に生きてますーって報告しても国外に追手なんか出さないだろうけど。ニルクが帰国しなければ安泰でしょ。あの婚約破棄劇は、このポンコツがラティを振り向かせたくてあの伯爵令嬢……だっけ? を侍らせてたけど。ラティが王太子妃になりたくないのをこのポンコツが理解していたからこそ、私がこのポンコツを唆して婚約破棄させた。でもそもそも、あの伯爵令嬢がポンコツに近づいたのは、第二王子の策略でしょ。あんだけ大勢の前でやらかしたポンコツが、今更戻っても王になれるわけ、ないじゃん。第二王子に心配すんなって言っときな」
偽護衛騎士は、目を白黒させながら、それでもミッツェの「じゃあね、バイバイ」という一言で立ち去った。ミッツェの殺気を肌身で感じて逆らう意思を持たなくなったのだろう。
相変わらず不定期更新です。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




