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現れた元王太子サマ・1

物凄く久しぶりの更新……

一応完結する気持ちは有りますが、気紛れ更新が続きます……

「お嬢様」


「あー、お帰り」


そういえば、このヒト居たんだっけ。それも一応私が頼み事をしてたわ。忘れてた。なんでかさっぱり解らないが、何故か私の事を気に入ってしまった暗殺者さん、もといクランが宿に戻って来た。

元王太子の命を助けて欲しい、とお願いして送り出してから暫く。その存在をすっかり忘れてた。


「お嬢様、俺のこと、忘れてたでしょ」


「うん」


ラティとお兄ちゃんとこの宿を出て行こうかな、なんて考えるくらい、綺麗さっぱり忘れてた。多分お兄ちゃんとラティの方が覚えていて「待っていなくていいの?」と言われていた。待っていなくていいのか、という質問にも、何か待つ必要が有るんだっけ? ってくらい、綺麗さっぱり。でも何となく「待ってた方がいいかなぁ」と答えていたわけで。うん、待つ必要は、クランのことだった。思い出した。


「お嬢様、酷いね」


「そうだね」


「こっちはちゃんとお嬢様の依頼をこなしたって言うのに」


「ってことは、元王太子、助かったの?」


「連れて来ましたよ」


「えっ⁉︎ どこ⁉︎」


宿の外を促されて窓から見れば、やけに薄汚れた元王太子が立ってた。……確かに無事だ。


「ラティ」


「なぁに?」


さっきまで部屋の奥でお兄ちゃんと今後の予定を話していたラティは、私に呼ばれて振り返って、クランを見て目を見張る。


「あら、帰って来たの」


「嫌そうに言ってますけど、俺はミッツェ様に忠誠を誓ったので離れませんよ」


「えっ。いつの間に忠誠を誓われてたの、私⁉︎」


そんな話をしたっけ?


「お嬢様……綺麗さっぱり忘れてますね」


「私の世界は、ラティとお兄ちゃんだけだからね」


生まれ育った環境が環境だけに、私の世界はとても狭い。ラティとお兄ちゃんとそれ以外。それ以外の中でも記憶するべき人とどうでもいい人に分けられる。元王太子は記憶するべき人の分類。あと、一応の両親? や、弟?


「ミッツェ! お兄ちゃんも、ミッツェとラティさえ居ればそれで生きていけるからねっ!」


あ、お兄ちゃんのめんどくさいボタンを押しちゃった。


「それでミッツェ。私に何か用?」


ラティもお兄ちゃんの事をスルーした。私も見習って、窓の外を示す。窓から覗いたラティの顔が速攻で嫌悪になった。


「なんで、アイツが、此処に、居ますの」


「アホな事やらかしてー、王様とか王妃様とかに嫌われてー、追放処分されてー、殺されかけたって」


ラティに答えれば、ラティが目を丸くした。


「殺されかけた⁉︎」


「いや、だってそうでしょ。ラティ、よく考えて。王命で結ばれた婚約を国王以外の人間が勝手に破棄。国王の命令って何よ? って話でしょう? そんでもって、アイツが選んだ女は婚約者が居るのにすり寄った……アバズレ。そんな女を国母にするわけないし、王命を無視したんだから息子で王太子とはいえ、愚か者。お花畑の脳みそ。そんな愚か者を国外追放処分って言ったって、他国に囚われれば争いの火種にしかならないじゃない。若しくは種馬?」


「それは……そうね。だから殺すしか無い、と。でも生きてるわね」


「まぁ殺されても寝覚めが悪いし。クランに命を助けてやってって頼んだわけ」


「成る程ね。でも生きてたら厄介でしょう?」


「まぁ命は狙われるよねー。あの護衛騎士もなんでついて来たんだろうねぇ。あのおバカをそのまま放置すれば良かったのに」


「確かに。……もしかして味方のふり?」


「その可能性も有るよねぇ。あのおバカを手助けする相手が居るのか。居るならどんな奴なのか。調べるためにおバカに忠誠を誓ったフリとか、有るよねぇ」


「それで、アイツはどうするんだ?」


私とラティの話にお兄ちゃんがそう割り込んで、私はニヤリと笑った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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